佐藤 北欧の家庭で実際に出合ったのは、統一された“北欧スタイル”ではなくて、安いものや高いもの、古いものや新しいものもあって、自分が好きなものを自分らしく使っている、独自のスタイルでした。そんなふうに暮らしを楽しもうとする、明るくあろうとする彼らの価値観や、そこから生み出される北欧の雑貨やデザインに魅せられて。それは、今もお店のミッションである「フィットする暮らし、つくろう」という価値観のベースになっています。

「北欧、暮らしの道具店」のトップページ。ネットショップでありながら読み物などのコンテンツも充実し、月間PV約1500万、UU約160万人を誇る
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会社を立ち上げるも失敗、残った100万円でお店をスタート

―― その後2006年に、お兄さんと「クラシコム」を創業されます。最初から北欧雑貨のお店をつくる予定だったのですか?

佐藤 最初は兄から不動産関係のウェブサービスを立ち上げるという提案を受け、その会社を手伝うことにしたんです。不動産業者を介さずに、オーナーと借主を直接結ぶサイトで、現在のAirbnbに似ていますね。ですが、システムを作るのにコストがかかるし、実力もなさすぎて、全くうまくいかなくて。1年もたたずに資本金が底をつき、07年の初夏には会社が潰れかけました(笑)。

「起業して1年もたたずに資本金が底をつき、会社が潰れかけました」(笑)
「起業して1年もたたずに資本金が底をつき、会社が潰れかけました」(笑)

 だったら「最後に兄妹で社員旅行でもするか」と兄が提案してくれて、会社の残り資金100万円を使って、私が好きな北欧(スウェーデン)に行くことにしたんです。その時、ただ旅行するだけというのも何だしと、 当時日本で人気が出始めていた北欧のビンテージ食器を買い付けて、日本で売ることを思い付きました。

 ところが、ほぼ全財産を費やして買い付けた食器は、梱包が甘かったのか、半分以上が割れて日本に届いたんです……。