佐藤 30歳を目前に新しいキャリアに挑戦しようと、新築モデルハウスのコーディネートの仕事に応募しました。面接といっても経験ゼロの素人なので、自分の部屋や友達の部屋をスタイリングしたものを写真集にして持っていったんです。今思えば、恥ずかし過ぎることを堂々とやったものですが(笑)、とにかく“暮らしが好き”ということを、情熱だけで必死にアピールして受け入れてもらいました。

20代、インテリアは本などで独学。とにかく「暮らしが好き」だった(写真はデンマーク製の小鳥の木製オブジェと、北欧ビンテージの花瓶)
20代、インテリアは本などで独学。とにかく「暮らしが好き」だった(写真はデンマーク製の小鳥の木製オブジェと、北欧ビンテージの花瓶)

 モデルルームで扱っていたスタイルは主にシンプルモダン。上司に恵まれて、光や色、素材の合わせ方などインテリアの基礎を学べたのですが、だんだん“人が住まない家”をつくること、自分の好みとは違うものを提案することに違和感を抱くようになって。その時に、私はインテリアの仕事ではなく、誰かの暮らしにポジティブな影響を及ぼす仕事がしたいんだ、と気付いたんです。

北欧で出合った理想のライフスタイルが転機に

―― その頃にした北欧旅行がお店をつくるきっかけとなったそうですが、どんなところに影響を受けたのでしょうか?

佐藤 初めての北欧旅行は、当時家具デザイナーだった夫の出張についていったのですが、現地で知り合った友人たちの働き方や暮らし方に触れる機会がありました。彼らは朝8時くらいに出社して、18時になったらさっと家に帰るんです。夕食にも招かれたのですが、キャンドルをともしてすてきなクロスを敷いて晩ごはんを食べるといった、日本で憧れられるようなことを、皆が当たり前にやっている。本当に衝撃を受けました。ほとんどの家具は手に入りやすいIKEAだったりするんですが、ビンテージのファブリックが掛かっていたり、椅子はおばあちゃんからもらったものだったり。