会社員を卒業したら、地域活性化に貢献する仕事に

鎌田 シードルを開発するために青森のリンゴ農家さんを訪ね歩くうちに、御所川原のような希少品種の存在も知っていたことが、10年の時を経ての今回のものづくり、「ファクトリエフード」の取り組みへとつながりました。

―― JR東日本で実績を積んだ後もカルビーの上級執行役員に就任されるなど、大企業の要職を歴任されてきた鎌田さんが、創業9年のベンチャー企業とタッグを組んだことも、ARIA世代の新たなキャリアモデルを示されています。ファクトリエとのご縁はいつから?

鎌田 もともと私がファクトリエ製品のファンで、よく購入していたんです。代表の山田さんが創業時から大切にしている「語れるものづくり」という哲学に深く共感して。私は20代後半で大手百貨店に出向していた経験があり、今の日本のアパレル業界の中で、縫製工場がどれだけ弱っているかを目の当たりにしてきました。だから、縫製工場を前面に出して、商品の開発も値付けも工場主導にこだわることがどれだけイノベーティブなことか、分かっていたつもりです。

 ご縁あって山田さんと知り合っていろんなお話をする中で、「会社員を卒業したら、地域活性化に貢献する仕事をしたい」と夢を語ったときに、「僕も食に挑戦したいと思っています。いつか一緒に何かできるといいですね」とおっしゃってくださったんです。それが2年前で、具体的に話が進んだのは私が英国留学から帰国した2020年春以降のこと。その後リンゴ農家を訪ねて走り回って、4カ月弱で発売までこぎ着けました。

―― ファクトリエと組むことで、鎌田さん自身にとって初めての挑戦となったことはありますか?