新しいアイデアが生まれない、チームメンバーのモチベーションが下がっている…。組織が抱えるさまざまな問題を解決する手法として、ファシリテーションが注目を集めています。人の内面や関係性に着目して創造的な対話を引き出し、現状を打破するファシリテーションスキルはどう磨けばいいのか。ファシリテーションの研究と共に、企業や自治体のプロジェクトなどで実践を行っているミミクリデザインCEO(2021年3月よりMIMIGURI代表取締役Co-CEO)の安斎勇樹さんが解説します。

(1)「ファシリテーション」で組織の見えない問題をひもとく
(2)誰かにイラッとしたときは「問い」の感覚を養うチャンス
(3)Web会議を盛り上げるには 最初の15分は会議しない ←今回はココ

問題が起きる前に、普段から「対話」に慣れておく

 僕たちの会社では「チェックイン」といって、会議の冒頭で15分くらい、本題に入らない時間を設けています。そこではあらかじめ決めておいた「問い」についてみんなで話したり、一人ひとりが今考えていることを自由にしゃべったりする。また、週1回のマネジャークラスの会議は、2時間設定しているうちの1時間を、今の重要な意思決定に関わらないコミュニケーションの時間にしています。全体の半分ですから、結構なコストですよね。話の内容をその後の会議のアジェンダに無理に結びつけたりもしませんし、前半と後半では進行役も変えて、完全にモードチェンジします。

 なぜこういうことを僕たちはしているのか。

 「対話慣れ」って確実にあって、組織に問題が起こったときだけ急に話し合おうとしてもできないんです。不要不急のときこそ、会議の中に対話の時間を組み込んで慣れておくことが大事だと思います。

「問題が起きたときだけ急に話し合おうとしてもうまくいきません。日ごろから『対話慣れ』しておくことは大事です」(MIMIGURI代表取締役Co-CEOの安斎勇樹さん)
「問題が起きたときだけ急に話し合おうとしてもうまくいきません。日ごろから『対話慣れ』しておくことは大事です」(MIMIGURI代表取締役Co-CEOの安斎勇樹さん)

 ファシリテーターの役割は対話を引き出すいい問いをデザインすること、とこれまでお話ししてきましたが、これは言い方を変えると「話してもいい『言い訳』を用意してあげること」でもあったりします。

 例えば、オフラインのイベントやワークショップに参加したとき、開始までのエントリーの時間が、何となく間が持たなくて気まずかった経験、ありませんか? 僕がファシリテーターをするときによくやるのが、名札のシールをわざと取り分けなければいけないように置いておくことです。最初に来た人に「ここに名前を書いて胸に貼ってほしいんですけど、次に来た人に説明してもらっていいですか?」とお願いする。そうすると、「なんかこれ、書くらしいですよ」「ありがとうございます、初めて参加されるんですか?」みたいに話し出せるんですよね。

 特にリモート環境では、ファシリテーションをする上でこうしたきっかけづくりが重要になってきます。