女性としての体の「後半生」に起きる変化は万国共通。フランスでは、心身のケアに東洋医学を取り入れる女性が増えているといいます。パリ郊外で指圧師として施療も行うジャーナリストの浅野素女さんが、40代からの心身の変化に向き合うフランス女性たちの素顔と、健やかな体との付き合い方を語ります。

 フランスは「カップル社会」である。レストランもバカンスも映画やお芝居も、何をするにもカップル単位で行動するのが常識だ。

 「子どもたちを両親のところに預けて、これからふたりで休暇旅行に行ってくる」という親がいても白い目で見られることはない。子どもはいずれ親の元を離れてゆく存在だ。親子関係が大切なのはもちろんだが、カップルあっての家庭、という認識で、子どもが小さいときから子ども抜きの時間をあえてつくる。この辺は日本と大きく違う点かもしれない。反対に、「カップル社会」だからこそ、独身の身にはなかなかつらい面もある。

 そんなフランスのカップルの関係を考える上で、ダブルベッドは象徴的な存在かもしれない。フランスのダブルベッドの標準幅は140cm。ひと昔前のフランス映画を見ると、恋人や夫婦が狭いベッドでからだを寄り添わせている場面に出合うが、当時は120cmという狭さだった。現在は160cm幅もかなり増えてきたが、他のヨーロッパの国に比べても狭いほうで、睡眠の質を考えると決していいとは言えない。それでも、カップルでいる以上はダブルベッドに寄り添って寝る

 ふた組にひと組が離婚するご時世である。離婚率が高いとはいえ、「カップル社会」であるので再婚率も高い。子連れ再婚など当たり前だ。フランスの男女はパートナーとの性関係を非常に大切にするゆえに、そこが破綻すると、さっさと仕切り直しとなる。当然、40代、50代で再婚というのも珍しくないから、子どもができたら、または更年期を過ぎたら性生活はおしまい、というわけにはいかない。パートナーのためにいつまでも性的に魅力的な存在でいようと努力する傾向が強く、そのためならホルモン治療もいとわないという女性が多かった。