「Learn(ラーン)=学び」に対して、「アンラーン」という言葉が注目を集めています。40歳定年制を提唱する東京大学教授の柳川範之さんは、「アンラーンこそ、新しい成長の技術」と言い切ります。今なぜアンラーンが必要か、最初の一歩はどう踏み出せばいいのか、アンラーンを阻む壁をどう乗り越えるのか…。3回連載の最終回です。

(1)学びのデトックス「アンラーン」が私たちに必要な理由
(2)無駄な会議、邪魔な前例主義…アンラーンであぶり出す
(3)過去の成功体験が学びと成長の機会を阻む 7つの壁とは ←今回はココ

アンラーンせずに逃げ切れる人はいない

編集部(以下、略) 第1回でアンラーンが必要な理由、第2回でアンラーンの技術を学んできました。ただ、今40代、50代なら、「このままアンラーンせずに逃げ切れるのではないか」という考えが頭をよぎることもあると思います。

柳川範之さん(以下、柳川) いや、誰も逃げ切れませんよ。今や人生100年時代ですから、「自分だけは過去の成功体験を抱え、変わらないでいられる」なんて、思わないほうがいい。アンラーンを実践する上でぶつかる壁と、アンラーンを知らないことで起きる不都合なことには、共通点もあります。そこから、改めてアンラーンの必要性に気づけるかもしれません。最終回の今回は、まずアンラーンを阻む壁を見ていきましょう。

―― 壁1~壁6は、誰しも一度は思ったこと、口にしたことがありそうな言葉ばかりですね。

柳川 1つ目から順に解説しましょう。「今さらそれは自分には無理だし、このままでいい」「自分は変わらなくても、誰かが何とかしてくれる」という壁は、キャリアの形成とともに、より強固になっていきます。新型コロナウイルス禍での「強制リセット」のような外的な圧力が強く働いた場合は、変わることへの納得感もあるでしょう。しかし、自分自身のアンラーンについては、外圧は基本的にはありません。現状維持への固執を、自分自身で解きほぐしてやる必要があります。

 そして、「これまで」と「これから」は全くの別物です。過去の成功体験が大きな人ほど、「今あるものを手放したくない」と、持っているすべてを肯定的に、唯一の正解のように信じて大切に抱え込んでいますが、変化の激しい時代にそれでうまく対応できるとは思えません。

―― ただ、自らの成功体験を手放すにはかなりの勇気がいりますよね。

「大きな変化が起きたときは、アンラーンのチャンスです」
「大きな変化が起きたときは、アンラーンのチャンスです」