「Learn(ラーン)=学び」に対して、「アンラーン」という言葉が注目を集めています。40歳定年制を提唱する東京大学教授の柳川範之さんは、「アンラーンこそ、新しい成長の技術」と言い切ります。今なぜアンラーンが必要か、最初の一歩はどう踏み出せばいいのか、アンラーンを阻む壁をどう乗り越えるのか…3回にわたってお届けします。

(1)学びのデトックス「アンラーン」が私たちに必要な理由
(2)無駄な会議、邪魔な前例主義…アンラーンであぶり出す ←今回はココ
(3)過去の成功体験が学びと成長の機会を阻む 7つの壁とは

アンラーンの3ステップ

編集部(以下、略) 今回はいよいよ、ビジネスパーソンでも実践可能な「アンラーン」の具体的な方法について聞いていきます。

柳川範之さん(以下、柳川) アンラーンが必要なのは、「自分のなじんだ狭い世界の環境や常識に染まって行動や思考にパターンが生じている人」だと前回お話ししました。そのサインは、思考や行動の細かなところに出ています。

 アンラーンの第一歩は、当たり前のものとして身に付いている、自分自身の思考の固定化に気づくことです。ここからは、誰もが実践可能な自問の方法を、3つのステップに分けて紹介します。

ステップ1 無意識にやっていることを「洗い出す」

柳川 アンラーンするべき対象は「無意識にやっていること」、「自動的に処理していること」の中にこそあります。まずは、それらをすべて洗い出しましょう。最も効果的なのは「文字化」です。手書きでも、スマホへのメモでも構いません。

 このとき、例えば「朝起きて家を出るまで」「家を出て会社に到着するまで」「会社に着いて、その日の最初の業務を開始するまで」といった時間帯でのカテゴリー分け、あるいは業務の種類などで「会議の準備・運営の際にやること」「営業に行く際の準備」といったテーマを決めて書き出すと、やりやすくなります。

「価値観が大きく変化しつつある時代。頭の中を常に『柔らかくて余白があって、方向転換可能な状態』にしておかねばなりません。そのためにアンラーンが必要です」
「価値観が大きく変化しつつある時代。頭の中を常に『柔らかくて余白があって、方向転換可能な状態』にしておかねばなりません。そのためにアンラーンが必要です」

―― 当たり前のものとして身に付いている行動は、時間や労力の無駄を省くため、ある程度は自動化をしている側面もあるかと思うのですが?

柳川 もちろんそうですし、適応力は大切です。ただ、アンラーンの観点では「このルーティンが、本当に『今も』最適なのか?」を見直したほうがいいと思います。特に、転勤や昇進などで状況が変わったとき、また「最近、どうもうまくいかなくなっている」と感じ始めたときにも、洗い出しが大切になってきます。

 アンラーンの考え方が身に付いていれば、うまくいかない理由に気づくセンサーがきちんと働くため、軌道修正していけるようになりますが、そこに至るまでは意識的に行う必要があります。また、完全に無意識化し、自動化した日常的な思考や行動については、センサーの動きが止まってしまいます。だからこそ、あえて見直すことがとても重要になります。

 例えば、定期的な会議。特定の人だけが話す、出席の必要がない人も召集される、頻度が多すぎるのに「この曜日のこの時間だと決まっているから」と放置されている、ということはないでしょうか。そして、その段階でも「現状維持でいい」とされているなら、アンラーンの出番ということになります。

ステップ2 「いつも」「これまでは」の思考にとらわれていないかチェック

柳川 次は、書き出したことについて、「前例至上主義的な思考にとらわれていないか」を、チェックしていきます。