「Learn(ラーン)=学び」に対して、「アンラーン」という言葉が注目を集めています。40歳定年制を提唱する東京大学教授の柳川範之さんは、「アンラーンこそ、新しい成長の技術」と言い切ります。今なぜアンラーンが必要か、最初の一歩はどう踏み出せばいいのか、アンラーンを阻む壁をどう乗り越えるのか…3回にわたってお届けします。

(1)学びのデトックス「アンラーン」が私たちに必要な理由 ←今回はココ
(2)無駄な会議、邪魔な前例主義…アンラーンであぶり出す
(3)過去の成功体験が学びと成長の機会を阻む 7つの壁とは

アンラーン=思考のクセからの脱却

編集部(以下、略) 柳川さんは、為末大さんとの共著『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』で、アンラーンを「過去の学びからクセやパターン、思い込みをなくすこと」と説明しています。

柳川範之さん(以下、柳川) 私たちは学生時代から、知識のインプットを重ねてきています。さらに「人生100年時代」に直面することで、「学び直し」「生涯学習」が注目されるようになりました。このような姿勢は素晴らしいものですが、気になるのは、こうした学びが常に「インプット」だけで語られることです。

 一般的に、学生時代は知識が多いことが評価につながり、社会人になってからは、組織内のルールや文化に染まることがキャリアを重ねるのに有利とされます。しかし、突然環境が変わったとき、インプットしてきた知識や経験にとらわれていると、臨機応変な対応ができない。これは、コロナ禍において多くの場面で見られたことです。

『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』(柳川範之・為末大/共著、日経BP)。アンラーンに関する具体的なノウハウが満載の一冊
『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』(柳川範之・為末大/共著、日経BP)。アンラーンに関する具体的なノウハウが満載の一冊

柳川 無意識のうちに身に付けた、パターン化された「思考のクセ」は、変化に直面したとき、柔軟な発想を妨げてしまうことがあります。さらには、自分の成長を止めてしまうことさえある。アンラーンとは「学ばない」ことではなく、また過去の学びをすべて忘れてしまえというのでもなく、学びや経験したことのストックから、クセやパターン、思い込みを取り除くこと。それによって、新たに成長し続けられる状態に自分を整えるための技術です。

 実はこの結論に達するまで、為末さんとは2年以上議論を重ねています。陸上選手としてオリンピックなどで輝かしい成績を残してから引退、そして現在に至る彼の体験を掘り下げることで、ビジネスパーソンでも実践可能な「アンラーン」の具体的な方法も見えてきました。

チェックリストの詳細は、次ページ以降で詳しく解説します
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