失敗や挫折から学びを得たママキャリ時代

──川合さんはこれまでのキャリアの中で、壁にぶち当たったり挫折したりしたことはなかったのでしょうか。

川合 壁は入社した時に感じました。男性と女性で扱われ方が違うという社会の壁を感じましたけれど、それ以降はありません。でも、仕事って難しいなという壁や失敗はありました。

──どんな失敗をされたのでしょうか。

川合 40代でフルタイムに戻ったタイミングでマネージャーになった時です。責任ある立場になれたのは、すごく嬉しかったのですが、私の30代はノンキャリ時代。会社としては、20代にバリバリ働いて、結果も出していたから大丈夫だろうと思ったのでしょうが、8年間仕事でなんのストレッチもしていない人間が、いきなりマネージャーとして働けるわけがない。私はどちらかというとコンセプチュアルなことが好きで、与えられた目標をどうやったら達成できるのかを考えたりするのは得意なのですが、それを人に伝えて役割を与えたり、みんなのモチベーションを上げたりするのは上手くない。「さあ行くわよ」と言って走り出しても、振り返ると誰もついてきてないとか、どうやら落伍している人がいるとか、やる気を失ってふて腐れている人がいるというような状態に。マネジメントにはすごく苦労しましたし、最初の1年くらいは、上司にも部下にも本当に迷惑をかけました。

──それで一度マネージャーの役を降りられたのですね。

川合 なんとかマネージャーらしくなったら、今度は仕事が面白くなりすぎて家庭とのバランスが上手にとれなくなってしまったのです。それまでの10数年の仕事人生で、オファーを受けたものを「ごめんなさい、できません」と返したことは一度もなかったので、最大の挫折でした。仕事で私の代わりはいるけれど、お母さんの代わりはいない……。そんな冷静な分析の下での判断だったのですが、自分の中では敵前逃亡のように感じてしまったのです。みんなが戦っているのに、私一人、しかもリーダーが逃げ出してしまった。それに対して、誰からも何も言われませんでしたが、自分としてはとても許せなくて、立ち直るのに半年くらいかかりました。

──どのようにその挫折を乗り越えたのですか。

川合 次に何かを任されることがあったら、逃げるのはやめようと、自分の中で決めました。一方で、逃げ出してしまうところまで自分を追い込まないように、周りとも上手く調整しながらやっていこう、自分だけ走っても仕方がないと気づきました。自分で腹落ちするまで考えたことで、落ち込みからは脱却することができ、もう一回やってみようっていう気にもなれました。

──そんな中、仕事と家庭の両立のために心がけていたことはありますか。

川合 子育てもそうですし、後に母親の介護をした時もそうですが、自分がやりきれないことはお金で解決していました。子育ての頃はまだそれほどお給料をもらっていませんから、晩ご飯をファミレスや出前で済ませたり、疲れたからタクシーに乗ったりというくらいでしたが、介護の頃にはある程度の余裕もあったので、掃除は業者に頼んでしまうなど、できないことがストレスになるくらいならお金で解決しようと、自分なりにバランスを取っていましたし、それは今も同じです。