部下の自走力を高めることがリーダーの重要な仕事

――取締役になって気がついたことは?

力石 企業として経営の持続性をどう考えるか、どのように継続的に生きていく組織にしていくかを考えるのはすごく大変だと身にしみて感じますね。これからは日本社会の中だけでなく、グローバル組織になっていくことも必要です。これまで、そんな見方をしたことはありませんでした。

――役員としての必要なスキルとかコンピタンスとかはなんでしょう?

力石 2つあると思います。1つは、取締役の前は部長職、その前はリーダーとそれぞれの段階でメンバーの育成と自分自身の切磋琢磨する必要があります。女性は若いときからそんなリーダーを志してほしいですね。それといろんな部門を経験して視野が広げてほしいですね。自社だけでなく他社がどんなことをやっているのかも重要だと思います。

――いろんなリーダーシップの形がありますが、力石さんはどのようなリーダーを心掛けていますか。

力石 メンバーの意見と会社の方向性、世の中の動きや価値観にぶれがないか、また、一人ひとりがモチベーションを持って動いているかを大切にすることを心掛けています。「これやりなさい」では、誰でもモチベーションは高まりません。まず「何が課題だと思う?」とか「何しなくてはいけないと思う?」とか。それを繰り返していくとその社員は自走し始めるんですね。この「自走力をいかに高めるか」が一番大切だと思っています。

 そういうリーダーシップスタイルは、おそらく、ロートのDNAだと思うのです。

――女性の役員を増やすためには何が必要だと思いますか?

力石 やはり若い女性リーダーを増やすことかなと思います。ただ30代になると出産する場合もあるので、会社の配慮や周りの理解が不可欠です。男性も介護で休むこともあるのだから、「お互い様だよね」って言いながら助け合ったり、笑い合ったりして、若いリーダーを増やすことが第一歩かと思います。

 ただ、一方で女性の研究職を増やすことも重要なことだと思っています。当社の女性比率は6割と高いですが、業界的にみて理系分野の女性進出は、まだとても遅れています。薬学部は今でも女性が多いのですが、教授はほぼ全員男性なんですよ。最近、母校の大阪大学ではようやく女性教授が誕生しましたが、理系全体ではまだまだ女性が少ないです。現在、産官学で女性活躍を推進しようという動きがあり、当社の研究職の女性も阪大の歯学部の助教授を兼ねるクロスアポイントができたんですね。深く研究しようと思えば、長く続けることはとても重要なので、これからも女性の研究職は増やしていきたいなと思っています。

――役員を目指す女性へエールをお願いします。

力石 「役員になろう!」と言いたい! 役員になると今までとは比較できないほど視野が広がります。それはすごく厳しくもありますが、楽しいですし、自分も成長します。ぜひ自分の成長に限界を設定しないで、目指してほしいですね。

インタビュアー:麓幸子=日経BP総研フェロー、取材&文:船木麻里、撮影:矢作常明

【アクセンチュアの視点】
 入社当初は寿退社が夢だったと言いながらも、結婚後も仕事を続け役員になられた力石さん。本望ではない異動や子育てといった変化の中でも女性ならではの視点を生かしながら力強く活躍してこられました。女性役員を増やすには、リーダークラスの頃から自分も切磋琢磨しながらメンバーを育成すること、幅広い経験をすること、そして、女性だけではなく男性も「お互い様」と助け合って理解を示すことが重要だと指摘されています。アクセンチュアの調査でも、女性が活躍できる会社は男性も活躍しやすい会社である、という結果が出ています。男女の区別なく、皆が働きやすい環境作りを目指して行くことが女性役員の増加につながっていくと考えます。