ガラスの天井を破る―初の女性取締役誕生に社内に歓喜の声が

――ところで管理職の醍醐味は何だと思いますか?

力石 2つあると思います。1つはメンバーの育成に関われること。困ったり、悩んだりしているときこそが、成長するきっかけになるので、そこに寄り添えるのはうれしい限りです。もう1つは自部門だけで解決することは少なく、他部門からより幅広い知見を持たないといけないので、会社全体を見ることができ、より知見が広がるというところじゃないですかね。

――さらに役員、取締役になって、どんなお気持ちでしたか。

力石 もうびっくりですよ。本当に思ってもみなかったことでした。

 私に何を期待されているのか不安でしたので、その場ですぐには「はい」とは言えず、「お話を聞かせてください」と言ったんです。山田(邦雄)会長からは「自然体でいいよ」と言われました。私ならではの社内の見え方、声の聞こえ方を大切にして、「今までどおりやってくれればいいから」と言われたのがうれしかったです。ますます自分が成長しなくては駄目だと強く思いました。

――周囲の反応はどうでしたか?

力石 周りの女性社員の方がすごく喜んでくれたのは意外でしたが、うれしかったです。みなさんが「おめでとう」だけでなくて「うれしいです」と言ってくれて。今まで話したことのない女性からも、社内ですれ違うときに声をかけたりしてくれて。「こういう影響もあるのだな」と実感しました。

――どうしても女性の場合は人と比べる場合もありますし、いろんなチャンスがあっても尻込みしてしまう人も多いのですが、力石さんはどうでしたか?

力石 私も30代まではどちらかというとそのタイプだったんです。ただ、学術という部門で、正しい情報を分かりやすく伝えることを継続していくうちに自信がつきました。そして40代になって管理職になり部下を育てること、そして子育てしながら働くことの楽しさも実感できるようになりました。

――ところで、当時は、育児と仕事はどうやって両立させていたのですか?

力石 子どもが小さい頃は、時短勤務制度もなかったので、子どもを保育園に送ってからバイクで高速を飛ばして出社時間に間に合わせました。朝は阪神高速道路が渋滞で、車では遅れるからです。バイクですり抜けるほうが速いので中型免許を取ったんですよ。もちろん免許は妊娠する前に取りました。こうなると思っていたから。

 主人の両親とは同居でしたが、「子どものことは自分たちでしなさい」が大前提だったので、送り迎えで頼ったことは一度もないです。今思えば、私も意地っぱりだと思いますけど。子どもが学童に行くようになってからは、ファミリーサポートを利用しました。