役員として大切な、フェアネスと複眼的なものの見方を磨く

――江川社長がこれまでに出会った女性エグゼクティブで、印象的な方はいましたか?

江川 アクセンチュア日本オフィスの女性役員は現在2人ですが、グローバルのアクセンチュアでは女性役員は当たり前の存在です。私のかつての上司もシンガポール人の女性やオーストラリア人の女性でした。私にとって、女性が上司であることも、女性が役員として活躍することもごく当然のことで、まったく違和感はありません。

――女性が役員をめざすにはどのような意識が必要でしょうか?

江川 男女に関係なく、大切なのは「フェアネス(公正)」だと思います。私が働き方改革を行ってきたのも、女性の味方ということではなくて、誰にとってもフェアな状態をつくりたいだけなのです。

――フェアネスへの思いが、改革の原動力になっているのですね。

江川 以前、私が責任者としてかかわったある業界は、クライアント先に行くと会議に出てくる担当者の半数以上は女性で、しかも皆さん非常に優秀でした。

 片や、その後担当した別の業界は男性中心のカルチャーで、クライアント先での会議に女性は一人もいませんでした。当社側の担当として私が女性を連れていくと、ミーティング後に「次から女性を連れてこないでください」と言われたほどです。両極端の業界を見て、「日本も女性がきちんと活躍できるフェアな社会にしないといけないのではないか」と思った体験が、根底にあります。

――女性が役員をめざす上で身に着けておくべき力はありますでしょうか?

江川 「複眼的なものの見方をする力」です。一つのものを見るとき、自社から見えるものとお客様から見えるものは違うことがありますよね。そういうことを理解できる「複眼ビュー」を持つことが大切です。ともすると自分や担当部門の考えに固執してしまいがちですが、相手は違う考えを持っていることを理解できる人が役員になってほしいですね。

――将来、管理職や役員をめざす若手社員に必要な心構えを教えてください。

江川 「若い頃の苦労は買ってでもしろ」と伝えたいですね。私が20代の頃は、プロジェクトの仕事をなんでも「自分にやらせてください」と手を挙げて引き受け、毎晩遅くまでがむしゃらに働いて経験を積みました。

 でも今の時代、そういう働き方は間違っていますので、仕事を早く終えて勉強時間にあてたり、ほかの会社の人と交流して知識を得るといったことを、若いうちから積み重ねておくことが、将来、管理職や役員になったときの糧になると思います。

インタビュアー:麓幸子=日経BP社執行役員、取材&文:吉楽美奈子、撮影:竹井俊晴