「長時間労働で、激務」のイメージが強かったアクセンチュアを、約2年半で、残業時間を大幅に削減し、女性も活躍しやすい企業風土に変革した江川昌史代表取締役社長。自らリードするアクセンチュア流の働き方改革「プロジェクト・プライド」により、女性の新卒採用数は2倍に増え、業績も4期連続2ケタ成長を続けている。役員として大切な意識に「フェアネス=公正」を挙げる江川社長。その信念に基づき推し進めた改革成功の要因と、デジタル時代における女性活用の重要性などについて聞いた。

「人材の確保」と「デジタル化への対応」が改革の後押しに

――女性の活躍推進には企業の「働き方改革」が欠かせないと言われています。アクセンチュアでは、江川社長自ら、働き方改革プロジェクトのリーダーとなり、2015年から果敢に推進していますね。社長の視点で改革の軌跡を記した著書も話題になっています。そもそも、なぜ改革をしようと思われたのでしょうか?

江川社長(以下、敬称略) きっかけは、ある人材紹介会社の方から、「アクセンチュアさん、採用関係で評判が悪いですよ」と言われてしまったことです。「激務で長時間労働だという噂が立っていて、人材を紹介しづらい」と。2014年末のことです。

 コンサルティング業である当社は、人材がすべての会社ですから、良い人材を採用できなければ仕事になりませんし、成長ものぞめません。その言葉に衝撃を受けた私は、「会社の体質を変えなければならない」と決意し、1カ月後にはアクセンチュア独自の働き方改革『プロジェクト・プライド』をスタートさせました。

江川昌史(えがわ・あつし)
アクセンチュア 代表取締役社長 

1989年慶應義塾大学商学部卒、同年アクセンチュアに入社。2000年にパートナー就任。消費財業界向け事業の日本統括を歴任し、2008年執行役員(製造・流通本部統括本部長)に就任。2014年取締役副社長に就任し、2015年9月より現職。政府の働き方改革に先駆け、2015年1月から同社の働き方改革「プロジェクト・プライド」を主導。その軌跡を記した著書『アクセンチュア流 生産性を高める「働き方改革」』(日本実業出版社)が話題となっている。

――変えたかった会社の体質とは、どのような点だったのでしょうか?

江川 まず、体力にものをいわせるような体育会系のカルチャーです。旧態依然とした働き方が常態化していましたから、社員も日本人男性が中心で、女性は採用が難しいばかりか、なかなか定着しませんでした。外国籍の社員も同様で、外資系でありながらダイバーシティにも欠けていました。

 ちょうどその頃、様々な産業がデジタル化にシフトし始めており、当社のビジネスでもデジタル時代への対応が急務となっていました。ところが、デジタル分野の推進には、女性や外国人、クリエイターといった多種多様な人材の能力と感性が不可欠なのですね。「このまま女性や外国籍の人が活躍しにくい組織風土を続けていたら、デジタル化の波に乗り遅れ、ビジネスチャンスを失ってしまう」という危機感も、改革を後押ししました。