修羅場経験を重ねてメンタルを強くすることが役員に必要なこと

――ぜひ教えてください!

志賀 プレッシャーを小さくする一番の方法は、思いつめないことです。難しいことを考えるときは時間を長くかけるのではなく、回数を分けて考える。私は仕事で今一ついい案が浮かばなかったら、一旦打ち切って間に全然違うことを入れます。孫と遊んだり、映画を見に行ったり、音楽を聴いたり。これは「内なる多様性」です。

 メンタルタフネスを高めることは、自分の中に内なる多様性がどれだけあるかにかかっていると私は思っています。仕事に家庭にと時間に追われるなかで、いかにメンタルにオンオフをつけて、息抜きしながらじょうずにストレスマネジメントをするか。これは役員になった人が乗り越えなければならない、大きな挑戦だと思います。

 私は難しいことが起こると、いつも鼻歌が出るんですよ。マジックショーのときによくBGMで流れる、「♪チャラララララ~」っていうメロディ。そういうときはうちの秘書は「志賀さん、また悪だくみしてる」って思っているはずです(笑)。難題にぶつかったときにどうしようと頭を抱えるのではなくて、「うーん、これは俺にしか解けないなあ」って面白がる。これも一つのストレスマネジメントです。

「プロフェッショナルであると同時に自分らしさを大事にしてほしい」と志賀さん
「プロフェッショナルであると同時に自分らしさを大事にしてほしい」と志賀さん

――そうした重圧を乗り越えることで得られる、役員としての仕事の醍醐味は何でしょうか。

志賀 会社の経営資源を使ってアウトプットを出すための意思決定に関われることだと思います。自分の能力や経験、あるいは引っ張ってくるチームの力次第で結果を大きくすることができる。もちろん結果が出なかったり怒られたりすることもあるけれど、そういうことを全部乗り越えて上にあがっていくと、使える経営資源がもっと大きくなって、さらに面白くなります。日産のようにBtoCの商売では、結果が出るということは車がたくさん売れて、多くのお客様が満足してくれたということ。それもまた力になります。

――役員をめざす女性たちへぜひエールをお願いします。

志賀 先ほどのルノーの話になりますが、女性の役員がみんなプロフェッショナルであると同時に、ファッションやお化粧、しぐさなどはすごく女性らしいんですね。男性受けするとかいうようなことは関係なく、かといって肩肘張ったところもなくて。

 日本でもそんなふうに、女性としての視点やものの考え方をぜひ持ち続けて役員になってほしいです。女性本来の魅力が自然に出てきて、男性と女性がイコールパートナーとして、お互いをリスペクトしながらディスカッションできる。そんな世界を共に頑張って作っていきましょう。

インタビュアー:麓幸子=日経BP社執行役員、取材&文:谷口絵美、撮影:大槻純一

◆2017年9月1日公開の記事を再掲載しました。