女性が仕事で抱える課題は世界共通 様々な階層で女性対象の研修を実施

――その研修は、女性に特化したものだったのでしょうか。

堀江 いいえ、当時はそういったものはなく、海外での研修も男女共通のものばかりでした。女性向けのプログラムに日本から参加できるようになったのは3つか4つ下の人たちからです。

「実はキャリアのゴールをあまり考えていなかった」という堀江さん。05年、全世界からリーダー候補が集まる「リーダーシップ・ディベロップメントプログラム」への参加で意識が変わったという

――アクセンチュアの女性向けの研修プログラムにはどんな特徴があるのでしょうか。

堀江 管理職に昇進した女性を対象に、その先のさらなる昇進を円滑にすることを目的として始まりました。日本に限らず会社全体で見ても女性幹部がなかなか増えないので、その原因をインクルージョン&ダイバーシティグループが調査し、課題を解決するノウハウを獲得するためのトレーニングを行うことにしたのです。

 女性たちは世界のどこでも似たような悩みを持っています。たとえばなかなか自信を持てない、いろんな人とどう関係を築いたらいいか分からない、など。ほかにも難しい事象に直面した時に交渉するすべが分からないとか、名刺交換の際に自分の方が役職が上なのに、一緒にいる男性へ先に名刺を渡されてしまうといったことも各国で起こっています。

 また、仕事のやり方の傾向には男女で差があるので、それを知識として理解し、自分が典型的な傾向にはまらないようにするためにはどうすればいいのかも考えさせます。

 今ではこうした研修は、入社半年後くらいから職位に応じた内容で展開しています。最初は国内の研修で、海外で開催されるものもあります(図表)。

――キャリアの段階ごとに、女性が直面しがちな課題を解決できるようになっているんですね。

堀江 ふだん仕事の現場にいると、キャリアや交渉スタイルみたいなことってあまり意識する機会がないですよね。あったとしても身近な人と比べた相対的な話になってしまいます。研修の場に行くと、全体の中での自分を知ることができますし、会社が女性特有の課題とその解決策をきちんと示すことで、「自分は何ができて、何ができないか」がクリアになります。

アクセンチュアの女性向けプロフェッショナル研修
アクセンチュアではキャリアの段階ごとに女性対象に研修が用意されている

――「うちは男女平等の処遇なので、女性にフォーカスした研修はしていません」というのが日本の多くの企業のスタンスです。しかし、そういうところでは、女性の管理職が育ちにくいです。そもそも少数派ですから。約4割の企業には課長相当以上の女性管理職すらいません。しかし、アクセンチュアでは、ずいぶん早い段階から女性向けの研修に加えて「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」についての研修も実施していますね。

堀江 はい。ダイバーシティ経営を取り入れている企業では割と早くから取り組んでいると思いますが、経営陣や管理職の立場の人が意思決定をする際に、本人が無意識のうちに持っている価値観が影響を与えることが分かっています。それは本能的な好き嫌いで決まる部分を含んでいて、たとえば「女性が強い態度で発言するのは好ましくない」という無意識な気持ちが、強い雰囲気の女性リーダーはよくないという判断につながったりします。海外の場合はジェンダーだけでなく、国籍や人種の問題も多分にはらんでいます。

 「アンコンシャス・バイアス・トレーニング」は管理職以上が必須で受けているのですが、最初はみんな「私はフェアな人間で、バイアスなどありません」と言うんです。でも、たとえば女性の部下に「こういう大変な仕事は子どもがいる彼女にはきついだろうから、もっと軽い仕事を」と思いやりのつもりで判断していることも、相手からすれば実力よりも下に評価されたと感じることがあります。こうした具体的な事例とセットでディスカッションしていくことで、自分の価値観によるバイアスがあることを自覚し、よりフェアな判断ができるようになることを目指しています。