早急に、女性リーダーを生む“インフラ”を整備せよ!

 パネルディスカッションではサントリーホールディングスの折井雅子さん、第一生命ホールディングスの渡邉寿美恵さん、アクセンチュアの堀江さんという、それぞれの業界を代表する企業の女性執行役員をパネリストに迎え、「女性役員を登用するために必要な条件」をテーマに議論がかわされた。

 「第一に女性活用の機運や風土の醸成、次に“パイプライン”の充実、そして“やってみなはれ”の精神」――。女性役員を増やすために必要な取り組みとしてこの3つを上げたのは、サントリーの折井さんだ。女性の活躍推進や上級職への登用は経営陣の“本気度”が現場に伝わって、初めて本格的に動き出す。そして、女性の活躍を進めていくという意志を、組織全体で共有することが重要になる。また、女性がキャリアアップし、役員に至るパイプラインが滞らないことも必須条件だ。そして女性役員の登用という、前例が少ない試みの背中を押すのが同社の“スピリット”と言うべき、挑戦者魂であるというわけだ。普遍性が高い考え方で、多くの日本企業にとっても女性活躍推進の指針となるのではないか。

 折井さんの「パイプライン」と重なるのが、第一生命・渡邉さんの見解だ。同社では管理職・部長・役員と各階層別にリーダー育成の研修体系を整備している。各研修での役員・上位層の女性管理職等による育成関与や多様なロールモデルの存在が、女性社員一人ひとりに適したキャリアアップやモチベーションアップにつながっているという。

(左)サントリーホールディングス執行役員・折井雅子さん/2012年就任。グループ企業の専務取締役を担う。(右)第一生命ホールディングス執行役員・渡邉寿美恵さん/2016年就任。人事、コンタクトセンターなどを担当
(左)サントリーホールディングス執行役員・折井雅子さん/2012年就任。グループ企業の専務取締役を担う。(右)第一生命ホールディングス執行役員・渡邉寿美恵さん/2016年就任。人事、コンタクトセンターなどを担当
(左)サントリーホールディングス執行役員・折井雅子さん/2012年就任。グループ企業の専務取締役を担う。(右)第一生命ホールディングス執行役員・渡邉寿美恵さん/2016年就任。人事、コンタクトセンターなどを担当

 堀江さんはアクセンチュアのユニークな制度である「スポンサー制度」について解説。スポンサーの役目は、「この人は担当分野で目覚ましい成果を上げたので、次は別の大きなチャンスを与えるべきだ」などと、自分が担当する社員を組織の中でアピールし、キャリアアップを後押しすること。いわば“育成を管理する”役回りだ。

 「チームが目指すゴールを分かりやすく示し、導く力」。パネリスト全員が異口同音に唱えた、リーダーシップの定義がこれだ。違いが出たのはゴールへ導くための方法論。時にコンフリクトを恐れず、進化や変革の糧にするのを強く意識するのが「折井流」なら、「渡邉流」は信頼を得ることがリーダーシップ構築のキーになると考え、一人ひとりとの対話を重視するといった具合だ。そして全員を目標に集中させるために、「孤独になる人」を作らないようにするのが「堀江流」と、組織を率いる方法論には個性が色濃く反映されていた。

 女性が管理職やチームリーダーに登用される機会は今後さらに増えていくだろう。巡ってきたチャンスに腰が引けてしまわないためにも、常にチャレンジできるようスキルを磨き、心構えをしておく。それが女性役員が「当たり前」の世の中を作る礎になるはずだ。

リーダーシップとは何か。そしていかに発揮されるべきなのか――。目指すゴールは同じでも、組織の「率い方」は三者三様だった
リーダーシップとは何か。そしていかに発揮されるべきなのか――。目指すゴールは同じでも、組織の「率い方」は三者三様だった

先進企業のトップが語る「女性の活躍は企業の生命線!」

第一生命ホールディングス会長・渡邉光一郎さん/1976年第一生命保険入社。調査部長、取締役常務執行役員などを経て、2010年に社長就任。2017年4月に会長に就任した
第一生命ホールディングス会長・渡邉光一郎さん/1976年第一生命保険入社。調査部長、取締役常務執行役員などを経て、2010年に社長就任。2017年4月に会長に就任した

 女性活躍推進は女性のためならず。正確には「女性“のみ”のためならず」ですが…。これは、企業が生き残っていくために必要な施策に過ぎません。

 顧客満足度を上げるには、顧客と密接に関わっている社員――当社でいうと営業の最前線にいる女性社員ですね――がいきいき働けていないといけません。しかし調査の結果、彼女たちの満足度が低いことが判明しました。そこで喫緊の課題として、女性の管理職登用や能力開発、家事育児との両立支援制度などを整備したのです。

 女性の活躍には、3つの柱が必要です。まず意識改革。会社の風土や社風を変える。とりわけ管理職の意識改革は重要です。次に能力開発や研修の制度を整備し、女性社員に経営の視点やリーダーシップを醸成してもらうこと。最後はワークスタイル変革。家庭との両立をしっかりと支援します。この3つは、「同時に」遂行することで大きな効果を発揮します。

 当社の場合はまず、一般職として入社した女性社員2人が執行役員になるという形で、施策が結実しました。女性の活躍推進には、ロールモデルが必要です。なぜならロールモデルが新たなロールモデルを呼ぶ仕組みが、女性社員の意欲を引き出すからです。 (談)

取材・文/高島三幸、撮影/鈴木愛子、デザイン/クマガイグラフィックス

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