今後、日本企業が世界を相手に勝ち残っていくには、女性の力が必要不可欠。しかし企業においてマネジメントを担う女性は、日本ではまだまだ“少数派”だ。登用する企業と、マネジメント層を目指す女性双方に足りていないもの。そのなかでも大きいのは「方法論」であると言えるだろう。今回のセミナーではリーダーシップ構築の方法論を中心に、熱い議論が交わされた。

登壇者で記念撮影。左端はパネルディスカッションでファシリテーターを務めた日経BP社執行役員の麓幸子
登壇者で記念撮影。左端はパネルディスカッションでファシリテーターを務めた日経BP社執行役員の麓幸子

「交渉」から逃げないことが、リーダーシップ獲得の近道

 女性がリーダーシップを構築する時、ハードルが高いと思いがちな要素が1つある――。そう語るのは「女性役員に必要なリーダーシップ」をテーマに講演した、アクセンチュア執行役員の堀江章子さん。その要素とは一体、何なのか。

 堀江さんは前提としてリーダーシップを、“管理”することではなく、方向性やビジョンを示し、目標達成に向けてメンバーを導く力と定義。その構成要素は、信頼性、EQ、エグゼクティブプレゼンス、影響力、強いネットワーク、グローバルプレゼンス、俊敏性、交渉力の8つだ。そして「交渉」こそが、多くの女性が苦手とするものだという。

 堀江さんは根拠として、交渉に対する男女の感じ方の違いをデータで示したうえで、「女性は交渉を“対立”と捉え、回避しようとする傾向があります」と指摘。

 女性リーダーを交渉から遠ざける要因がもう1つある。それは日本の企業社会での、“暗黙の常識”だ。まだまだ、女性の行動は制約されている。強い態度で交渉することで、「女性らしくない」と評されることを恐れる女性は多いのだ。

交渉の「7つのポイント」はすべてつながっている
交渉の「7つのポイント」はすべてつながっている
「交渉で押さえておくべき7つのポイント」は、図のように連携している。円滑なコミュニケーションが取れる関係性を構築できれば、実りある議論ができる。その結果、最善の結果が得られなかったとしても、納得感のある成果を得ることは可能——といった具合だ
アクセンチュア執行役員・堀江章子さん/2014年就任。アジア・パシフィック地域の証券グループ統括
アクセンチュア執行役員・堀江章子さん/2014年就任。アジア・パシフィック地域の証券グループ統括

 とはいえリーダーが交渉から逃げることで生じる機会損失は、組織にダメージを与える。そのため、交渉を「スキル」と捉え直すことも必要だろう。堀江さんによると交渉には、押さえるべきポイントが7つあり、上図のように、相互に関連している。相手と関係性が築けて、円滑なコミュニケーションが取れれば目標を明確にしやすく、取り得る選択肢についてフェアな議論ができる。議論の結果、合意が得られなければ代案を提示すればよく、合意が得られれば実現に向けて行動する――といった具合だ。

 「リーダーになると、交渉の場が増えます。女性は『人のためなら頑張れる』という強みがある。チームのために、組織のためにと考え、苦手意識を払拭して取り組んでください」

 堀江さんは会場の女性たちに、そうエールを送って講演を締めくくった。