「この会社でどんなことを成し遂げたいか」を考え、視野を広げる

──女性の場合、仕事には一生懸命取り組んでいるのにもかかわらず、昇進に消極的な人も多いかもしれません。

及川 私のいままでの経験上、男性社員に「昇格試験を受けない?」とすすめて、「僕なんかが……」と言った人はゼロです。でも、女性は「なぜ、私なんでしょう」「私で務まるでしょうか」とまず聞く人が多いです。実力はあるのに、ちょっと自信がない。本当にできるのか、確認したいのでしょうね。女性は男性と違って言い訳をつくることもできます。子どもがいたり、出産を控えていたり。いま責任のある立場になったら会社に迷惑がかかるかも……、と思ってしまう人もいます。でも、本当にやりたいことがあるのなら、「やらせてください」と言って欲しい。環境への不安もあると思います。でも、案ずるより産むがやすしです。飛び込んでみて欲しい。見えない世界が広がっているので。もし仮に意に染まないポストだったとしても、将来必ず役に立つ時がきます。

──女性の管理職がもっと増えていく組織にするために、及川さんがリーダーとして心がけていることはありますか?

及川 私に「期待している」と言ってくれた人がいたように、背中を押してあげることも必要だと思っています。会社にいると「私は本当は何がやりたいのだろう」と考える機会って、意外とないものです。「この会社でどんなことを成し遂げたいか」を聞いてあげることで、目の前のことだけでなく5年後にどうしていたいか、視野が広がるのではないかと思っています。

──最後に、役員も視野に入れて働くために、女性たちへアドバイスをお願いします。

及川 私がよく話すのは「可能性の扉は自動ドアではない」ということ。ただじっと待っていても開きません。引き戸か押し戸か、ガラガラと横に開くのかわからないこともあるでしょう。どうぞ勇気を出して、ノックしてみたり、押したり引いたりしてみてください。時には、じたばたすることも必要。可能性の扉を開くきっかけは自分で作っていきましょう。


 及川さんは入社以来、何度も苦労された経験を赤裸々にお話しくださいました。数々の転機を乗り越えてきたエピソードは、周りの人たちと真摯に向き合ってきたお人柄が感じられます。
「ポストは努力の結果与えられるものではなく、志によって与えられるもの」というメッセージは、管理職というオファーを受けるか受けないか悩みがちな女性たちに、管理職は自分のビジョンを実現するための手段であると気づかせてくれるのではないでしょうか。

取材・文/中澤小百合 写真/新山貴一