若手から幹部候補まで幅広い層を対象とした育成プログラムを用意し、女性社員のキャリアアップ支援に力を入れるSOMPOホールディングス。グループ全体の女性管理職比率は2013年7月の5%から17年4月には18.7%へ上昇、初の女性役員も誕生するなど、パイプライン形成の取り組みは着実に成果を上げている。人材育成策やダイバーシティを積極的に推進する櫻田謙悟社長に、女性の社会参画を重視する理由や、経営層を目指す上で必要な心構えについて聞いた。
ダイバーシティマネジメントでなければ生き残れない
――櫻田社長は経営者として、ダイバーシティマネジメントの経営的メリットをどのようにお考えでしょうか。
櫻田社長(以下、櫻田) 私はメリットという次元ではなく、やらなければ生き残れないという危機感に近い思いを持っています。
今日本が抱えている最大の課題は、世界の中でもきわめて低い生産性です。人口のピラミッドが大きく高齢化にシフトしているにもかかわらず、また、従来の日本的雇用慣行をはじめとする人事制度がすでに制度疲労を起こしているにもかかわらず、この20年間何もしてこなかった。結果として、OECDに加盟する35カ国中、時間当たりの労働生産性が21位という低いレベルに甘んじざるを得なくなりました。
本来、ダイバーシティというのは性別だけでなく、国籍や年齢、LGBTなど多様な要素を含みます。日本は先進国の中でも性別の問題という意識が圧倒的に強いですが、まずは日本的でいいので、女性の社会参画を可及的に進める必要があります。そうしなければ、生産性の向上はないと思っています。
――女性が社会参画すると、なぜ生産性が上がるのでしょうか。
櫻田 私は経済同友会で人材登用と生産性革新に関する委員会の委員長を務めて3年目になります。そこで、生産性はどうやったら上がるのかということをずっと考えてきました。付加価値と、それを生み出すために使った労働者の数や労働時間を分子分母の関係で考えて因数分解していっても、答えは出てきません。それで因数分解はいったんやめることにした。
例えば、「イノベーションが起きると生産性が上がる」という相関関係はだいだいはっきりしていますよね。もちろんそうではない場合もありますが、上がる蓋然性は高いので、生産性を上げるためにはイノベーションを起こしたほうがいいよね、ということが言える。
次に、イノベーションが起こるためには何が必要かというと、摩擦や欲求です。何かが足りない、困っている、頭にきているなど、いろいろな状況があります。ではどうして摩擦や欲求が生じるのかというと、みんなが同じことを考えないから。それがダイバーシティ、多様性です。
ダイバーシティはイノベーションを生み、イノベーションは生産性向上につながる。100%ではないけれど、そういう現象につながることが多い。だから進めた方がいいんだという考えにたどりつきました。