新たな時代のリーダーに必要なエグゼクティブ・プレゼンス
世界55カ国200都市で事業を展開する総合コンサルティング企業のアクセンチュア。ジェンダーダイバーシティ政策を経営上の重要な戦略と捉える同社では、グローバルでの女性リーダーはすでに30%を超える。日本法人も2006年に女性活躍施策をスタートし、約10年で女性社員数は5倍、女性管理職数は4倍となった。
まずは、そんな同社で活躍する田村京子さんが登壇。「女性役員に必要なリーダーシップの育成―セルフブランディングとその影響力―」をテーマに語った。
新しい時代のリーダーに必要な要素といわれる「エグゼクティブ・プレゼンス」。リーダーとしての存在感のことであり、管理職になるためには不可欠なものだ。例えば、「この人に頼れば力になってくれそうだと感じさせる力」などが、それに当たる。「本来、他人との交流の中で醸成されるものだが、自分で作り出すことも可能。確立できれば、信頼や評判、さらには成果にもつながる」と、田村さん。
その基礎となるのが、パーソナルブランドだという。先を見通しにくいVUCAと呼ばれる時代。これからは多様なリーダー、つまり従来型ではない独自のリーダー像が求められる。「旧来型の男性社会が求めるものではなく、自分がなりたいと思うエグゼクティブ像をしっかりと捉え、パーソナルブランディングすることが大事。そして、最終的には自分はどんなことで認知される人物になりたいのかを把握し、周囲にそれを発信することも重要です」と、田村さんは力説。
また、それとともにエグゼクティブに求められる「影響力」については、「アイデア、価値観、精神的エネルギーを効果的に使うことで、影響力を広げることができる」と、ヒントを与えてくれた。
最後は、「セルフブランドを自分自身の手で作り、自分なりのエグゼクティブの道を邁進してください」と語り、講演を締めくくった。
男性と同質ではないことが、大きな強みになる女性リーダー
続いて行われたパネルディスカッション「女性役員を登用するために必要な条件」では、アクセンチュアの田村さんをMCに、4人の女性役員を迎え、3つのテーマについてトークが繰り広げられた。
まずは、SOMPO企業保険金サポートの陶山さなえさん、セブン-イレブン・ジャパンの藤本圭子さん、ロート製薬の力石正子さん、アクセンチュアの堀江章子さんが、それぞれ自己紹介をした後、ひとつ目のテーマ「キャリアの転機」について議論。「執行役員になった時、社内外の女性から激励の言葉をたくさんもらい、次の世代につなげるためにも、ここで倒れてはいけないと、奮起するきっかけになった」と藤本さん。また、力石さんの「その時はイヤだなと思ったことが転機になることも。後からしか見えないことも多い」という意見にも注目が集まった。
2つ目のテーマ「役員に昇格した理由と、経営側が女性役員に望んだこと」については、「ジェンダーダイバーシティが進む中で、そのリーダーシップを取る1人として昇格したのだと思う。これまでいた男性とは同質ではない視点や観点が求められていた」と、堀江さん。また、役員に昇格した理由として「私が心身ともにタフなので、最後まで投げ出さずにやり遂げると思われたのでは」という陶山さんのお話も印象を残した。
3つ目のテーマである「女性役員の登用による社会への影響」では、現役トップリーダーならではの言葉が並んだ。象徴的だったのは、「イノベーションや消費拡大などが期待でき、企業の業績の向上や社会の持続的成長につながる。女性だけのメリットではない」という陶山さんの言葉だろう。
最後に発信した四人四様のメッセージも、会場に集まった人々の心を捉えた。「男性との違いを強みとして活かし、自分らしくしなやかに挑戦してほしい」(陶山さん)「成果預金と人間関係預金をしてください。この2つが貯まれば、必ず道が開けてくるはず」(藤本さん)「チャンスは、馬の尻尾ではなく“たてがみ”にある。チャンスだと思ったら、怯まずに掴んで」(力石さん)「女性の活躍を許容する社会は、誰もが活躍できる社会。それを期待されていると意識して前に進んでほしい」(堀江さん)とエールを送り、舞台を後にした。
※ご登場いただいた方の肩書きは、開催当時のものです。