「女性役員に必要なリーダーシップとは」

問題は女性リーダー育成の「ノウハウ」がないこと

アクセンチュア執行役員 堀江章子さん
アクセンチュア執行役員 堀江章子さん
新卒でアクセンチュアに入社。2014年から執行役員。アジア・パシフィック地域の証券グループの統括を務めながら、多様な人材がリーダーとして力を発揮できる組織作りに尽力している
リーダーとマネジャーは「同義」ではない
リーダーの役割とは――
● ビジョンを設定する
● 部下にビジョンを示す
● 部下を教え、導く
● 部下が目標を達成できるようにする
● 会社の業績を意識する
マネジャーの役割とは――
● ビジョンを実現するための行動方針を設定する
● 一定のアウトプットを保つ
● 日々の仕事の監督をする
● プロジェクトの収益を意識する

リーダー(経営層)に求められる役割は、マネジャー(管理職)より1段高い。ただし「“管理”に走ってしまうリーダー」「つい実務を自分がやってしまうマネジャー」が多いのもまた現実。アクセンチュアでは役職者向け研修で、両者の違いを徹底させる。
経営層には、上の8つの能力をバランスよく備えることが求められる。女性はこのうち「交渉」を不得手とする人が多い傾向にあるという。そこでアクセンチュアでは、交渉のトレーニングを実施している。「お願いごと、頼みごとから始める」ことで交渉力を高めることは可能だという。

 女性役員に必要なリーダーシップとは何か。また、それはどのようにして身につけていけばいいのか。アクセンチュア執行役員、堀江章子さんは同社の人材育成プログラムを題材に、女性役員の育成方法について解説した。

 どこから手をつけていいのかわからない、“お手上げ”状態――。それが日本における、女性幹部社員登用の現状だ。周知の通り、そもそも日本の企業社会は海外に比べて女性役員の数が少ない。しかし問題はそれだけではない。アクセンチュアの調査では、(女性役員が)今後増えていくと考えている経営者も、極めて少ないというのが実情なのだ。同社が30カ国以上の経営層に対して行ったアンケートでは、「2020年までに女性のCEOや経営会議メンバーが増える可能性について、米国では約8割が前向きな回答だったのに対し、日本では約3割で、5割を切ったのは日本のみだった。この調査結果について堀江さんは、「日本の企業では前例が少ないため、『女性がリーダーになるのは難しい』という先入観が強いことや、女性管理職を育成するノウハウがないといったことが背景にあります」と指摘した。

 アクセンチュアでは女性向けの「リーダーシッププログラム」に取り組んできた。若手も将来、管理職になった時のことをイメージして働くためのトレーニング。それが同社の研修の特徴だ。研修は段階を踏んで実施される。「スタッフ」から始まりマネジャー、シニアマネジャー、マネジングディレクターとレイヤーが上がるごとに内容も変わるという。

 例えばシニアマネジャー候補者向けのトレーニングでは、スキル以外に、役職者としての振る舞いや発言の仕方なども学ぶことになるし、執行役員候補者ともなると、「リーダーとマネジャーの役割の違い」も理解する必要が生じる(上)。さらに上の図のように、8つの“必須能力”をバランスよく備えることが求められる。とりわけ重視されるのが、交渉力だという。

 「女性は交渉をする際、交渉相手との関係性を“対立”と捉えがち。当然、居心地のいい役回りではないので交渉は避けたい。しかしそれは仕事上の機会の損失、ひいてはパートナーや部下からの信用失墜につながる。そこで交渉を成功させるポイントを、事例に沿って学びます」(堀江さん)

 アクセンチュアではこのプログラムを、日本企業向けにカスタマイズする計画がある。

 「女性が当然のようにリーダーとして活躍する社会の実現に向け、日本企業の課題解決のために今後取り組んでいきます」