東京電力に入社した当初は、ガッツもなくこんなに長く勤めるとは夢にも思っていませんでしたと話す長﨑桃子さん。管理職を経て、2017年から約2年間はテプコカスタマーサービスの社長を経験、現在も東京電力エナジーパートナーの常務取締役として活躍している。一方で、2児の出産、子育ても。そんな長﨑さんに、これまでのキャリアストーリーと、女性の働き方に対する心構えについて伺った。

目の前の仕事を楽しみ、坦々とキャリアを重ねた営業時代

──長﨑さんは現在、東京電力エナジーパートナーで役員という責任ある立場に就かれていますが、東京電力入社当初から、現在のようなご自身の姿を見据えてキャリアを重ねてこられたのでしょうか。

長﨑 実は、こんなに長く勤めるとは夢にも思っていませんでした。当社では入社して10年を迎えるとリフレッシュ休暇が取得できるのですが、入社当時はよく同期と「リフレッシュ休暇を取るまでになったらどうする?」と話していたほど。

──それは意外ですね。

長﨑 ただ、仕事においてもプライベートにおいてもわりとのんきな方で、目の前にあることに夢中になる、今関わっている仕事が天職だと思うところがあるんです。また、自分の素質にないことを努力と意欲で達成するのは好きなので、与えられた仕事をゲームのように一つ一つこなしてきたという感じです。何かをきっかけに上を目指したいと思ったとか、突然メガ進化したというわけではないんです。

<b>長﨑桃子(ながさき・ももこ)さん</b><br>東京電力エナジーパートナー<br>常務取締役 最高情報責任者(CIO) オペレーション本部長<br>1992年、慶應義塾大学法学部卒業。同4月に東京電力に入社し、4年間の支社勤務を経た後、本社営業部へ。その後10数年間は、結婚、出産などのライフイベントを挟みながら、同部署内で活躍。2012年6月に本店経営改革本部事務局メンバーに抜擢。2016年4月、東京電力エナジーパートナーに異動し、暮らし&ビジネスサービス事業本部戦略・マーケティンググループマネージャーに。また同年9月には、リビング事業本部戦略・マーケティンググループマネージャー兼ガス事業プロジェクト推進室ガスライフ推進グループマネージャーとなる。そして2017年6月、テプコカスタマーサービス社長に就任。2019年4月に東京電力エナジーパートナーに戻り、現職に
長﨑桃子(ながさき・ももこ)さん
東京電力エナジーパートナー
常務取締役 最高情報責任者(CIO) オペレーション本部長
1992年、慶應義塾大学法学部卒業。同4月に東京電力に入社し、4年間の支社勤務を経た後、本社営業部へ。その後10数年間は、結婚、出産などのライフイベントを挟みながら、同部署内で活躍。2012年6月に本店経営改革本部事務局メンバーに抜擢。2016年4月、東京電力エナジーパートナーに異動し、暮らし&ビジネスサービス事業本部戦略・マーケティンググループマネージャーに。また同年9月には、リビング事業本部戦略・マーケティンググループマネージャー兼ガス事業プロジェクト推進室ガスライフ推進グループマネージャーとなる。そして2017年6月、テプコカスタマーサービス社長に就任。2019年4月に東京電力エナジーパートナーに戻り、現職に

──長期間、営業部でキャリアを積まれてきたそうですが、その間につまずきや壁はありましたか?

長﨑 営業といっても、長い間は一スタッフでした。現場の前線に立ったのはオール電化営業の部署に行った時。当初社内では、「長﨑桃子は現場では使えない」と言われていました。生意気ですし、理詰めなところがあったからだと思います。そして実際、最初の1年間はまったく実績が出ませんでした。周りの噂通り、私にはできないのかと焦りました。営業で成績を出せないのは致命的なところがあるので、役割を果たせていない罪悪感で辛かったです。ただその時、私の前任だった先輩が、自分も初めの1年間は鳴かず飛ばずで、1年後くらいからだんだんお客さまとの関係ができてきて、実績が出てくるからと励ましてくれたのです。なるほどと思っていたら、確かに1年くらいたった頃からいろいろな案件で成績が出始めるように。それからは営業がすごく楽しくなり、お客さまから教えられることも多く、絶好調でした。

──そんな矢先に、東日本大震災が起こったのですね。

長﨑 震災後、オール電化営業が中止されたため、私たちはやることがなくなってしまいました。営業なのにお客さまのところにも行けない、でも出社する。仕事がないって辛いですよね。そんな状況の中、多くの社員が会社を辞めたのです。私も、「辞めたらどうなるのかな」とは考えました。でもその時、大正時代の関東大震災で被災した祖母の話を急に思い出したのです。食べるものもろくにない厳しい状況の中、ある日電気がついたら、みんなの心がパーッと明るくなったのだと。電気事業は人の心を照らす事業。そんな素敵な事業を辞めるという選択肢はない、そう思って留まりました。