最初は怖くて当たり前。“一歩”踏み出すことで世界が変わり始める

 続いて行われたパネルディスカッション「女性役員を登用するために必要な条件」では、企業の意志決定を担う4人の女性によって活発な議論が交わされた。

日本航空代表取締役専務執行役員・大川順子さん(左上)、野村信託銀行執行役社長・鳥海智絵さん(左下)、リクルートスタッフィング代表取締役社長・柏村美生さん(右上)、アクセンチュア執行役員・堀江章子さん(右下)
日本航空代表取締役専務執行役員・大川順子さん(左上)、野村信託銀行執行役社長・鳥海智絵さん(左下)、リクルートスタッフィング代表取締役社長・柏村美生さん(右上)、アクセンチュア執行役員・堀江章子さん(右下)

 最初のテーマは「女性管理職の“先駆者”として経験した苦労と、そこから得た学び」。

 まず、会場に詰めかけた“未知の世界”へ羽ばたこうとしている女性たちを勇気づけたのは、JALの大川順子さん。「女性はいきなり“少数派”になるのだから、怖くて当たり前。でも、支えてくれる仲間の存在が励みになるはず」と語った。野村信託銀行の鳥海智絵さんは野村證券史上、初めて女性で社長秘書に就任した。この時、「女性なのに許せない」と男性社員から言われたという。「内心、そうだろうと思っていたので、むしろスッキリしました(笑)」と開き直りの重要性を訴えた。アクセンチュアの堀江章子さんは上級管理職に就任した時、グローバルのボードメンバーから「世界では当たり前だから」と励まされたことが心強かったと当時を振り返った。

 「女性役員の増加が社会に与える影響」というテーマでは、パネリストたちの答えが聴衆をワクワクさせてくれた。鳥海さんは「女性のストレートに結果を求める姿勢が、効率的な社会を生むはず」と回答。リクルートスタッフィングの柏村美生さんは女性活躍がもたらす、「男性や健常者という従来型の労働市場における“マジョリティ”だけでなく、すべての人が働きやすい社会」の実現について語った。堀江さんは男女の所得格差のデータをひもときつつ、賃金格差の正体が能力差ではなく“役割の違い”であることを正しく理解し、女性の能力が男性に劣るものではないと自覚することの重要性を訴えた。

 最後は4人から、役員を目指す女性たちへのエールで締めくくられた。「自分が『こうありたい』と思っている女性の話に耳を傾け、自身の“準備”がどこまでできているかを認識してほしい」(堀江さん)、「自分がどういう時に生き生きと働けているかを知ってほしい」(柏村さん)、「自信がないこと、臆病なことを大切にしてほしい」(鳥海さん)。そして大川さんが「皆さんで楽しい社会の実現に一役買いましょう」と会場に“点火”。ディスカッションは幕を閉じた。

今回は3人の“企業トップ”が登壇。日経BP執行役員、麓幸子の司会で活発な議論が展開された
今回は3人の“企業トップ”が登壇。日経BP執行役員、麓幸子の司会で活発な議論が展開された
女性が活躍している会社が好業績を上げる「3つの理由」
 なぜ、女性が活躍している企業は好業績なのか――。日産自動車元COOの志賀俊之さんによると、理由は3つあるという。1つ目は、イノベーションが生まれるから。「男社会に『活躍する女性』が増えることで得られる多様性が、イノベーションの源泉。企業は“異質”な存在を受け入れる度量が求められる」(志賀さん)。2つ目は女性活躍に本気で取り組む経営者が持つ、変革への積極性が、挙げられる。変化を恐れぬ姿勢こそが、最終的に成長をもたらすのだ。3つ目は、男女の協働はそれ自体が成果に直結するということ。「役員全員が男なら、それは完全な同質化社会。得られる結果は『見えてしまって』いる。でも、女性役員を半分にすれば、互いが切磋琢磨することで化学反応が起こり、成果を生む」。そうした性差を超えて切磋琢磨し合う環境作りこそ、企業が生き延びる道だと締めくくった。

志賀俊之さん(日産自動車取締役、産業革新機構代表取締役会長CEO)/日産自動車COOを経て2015年、産業革新機構会長に就任

取材/高島三幸 撮影/鈴木愛子

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