日本企業が閉塞感を打破し、新たな成長軌道に乗るには女性の活躍が不可欠。その“旗手”となるべき存在が、「女性役員」だ。3回目となる今回は、パネリストに「経営トップ」たちを迎えた。

“黒一点”の日産自動車元COO、志賀俊之さんを中心に集まった、登壇者の皆さん。司会は日経BP社執行役員の麓幸子(右端)が務めた
“黒一点”の日産自動車元COO、志賀俊之さんを中心に集まった、登壇者の皆さん。司会は日経BP社執行役員の麓幸子(右端)が務めた

リーダーたるもの「立ち居振る舞い」にも手を抜くべからず!

 アクセンチュアでのコンサルタントとしての業務と並行し、大学などで教壇に立つ秦純子さん。現役の“教員”でもある秦さんならではの、実演を交えた「女性役員に必要なリーダーシップの育成―エグゼクティブ・プレゼンスについて」は大いに盛り上がった。

 アクセンチュアはダイバーシティーを重視する企業だ。グローバルでは約40%が女性で、管理職や役員に占める女性の比率も高い。同社では女性社員に対して、どのような「リーダーシップ教育」を行っているのか。

 アクセンチュアでは「マネジャーとリーダーは明確に違う」という前提に基づいて、「意思決定層としてのリーダー」に必要な8つの能力について教えている。信頼性、交渉力、俊敏性、グローバル・プレゼンス、強いネットワーク、影響力、エグゼクティブ・プレゼンス、EQがその「リーダーに求められる8大能力」だ。今回、秦さんは「エグゼクティブ・プレゼンス」を講演の主題に据えた。

アクセンチュア 製造・流通本部 マネジング・ディレクター
アクセンチュア 製造・流通本部 マネジング・ディレクター
秦 純子さん

 「水に小石を落とすと波紋が広がるように、個人の行動が思いがけないほど広い範囲に影響を与えることがある。リーダーとしての言動は、周囲に及ぼす影響の大きさを自覚して行う必要があります」(秦さん)

 普段の発言や立ち居振る舞いを通じ、「頼りになりそうだ」「逆境やプレッシャーに打ち勝つ力を与えてくれる人だ」などと周囲に対して印象づける。それが、エグゼクティブ・プレゼンスの要諦だ。アメリカでは経営者の多くがリーダーの素養として、「極めて重要だ」と認識している能力でもあるのだ。

 これに加えて、部下の心理状態や周囲の状況を分かったうえで、コミュニケーションを取っていくことも重要だ。この時、「何を伝えたいか」という内容だけでなく、それを効果的に伝えるためのボディーランゲージなども重視される。それだけではない。歩き方や服装、髪型、持ち物といったパーソナルスタイルも、自身の人物像を周りに伝えるうえでは決して軽視できない要素なのだ。

 実際、アクセンチュアのリーダー育成プログラムでは会議室に入室する際の“視線”の動きに始まり、歩き方や「どの椅子にどう座るか」まで、ロールプレイを交えたトレーニングが行われるという。

 「エグゼクティブ・プレゼンスを身につけることは、リーダーとして活躍するうえで大きな武器になります。一方でリーダーには、自分が周りに与える影響についてフィードバックを受ける機会がなかなかありません。社内外問わず、身近な人から意見をもらえる環境を作っておくことも必要です」(秦さん)

エグゼクティブ・プレゼンスを伝えるリーダーの特性
エグゼクティブ・プレゼンスを伝えるリーダーの特性
エグゼクティブ・プレゼンスとは他人との交流のなかで時間をかけて醸成される「この人はこういう人だ」という認識や感覚のこと。これを確立し、良い評判が広がることは仕事における成功をアシストしてくれる