国内最大のコスメと美容の総合サイトとして、女性にとってとても身近な存在の『@cosme(アットコスメ)』。その共同創業者である山田メユミさんは、仕事に邁進した20代、30代を経て、40歳で第一子を出産。その後、育児と両立して女性が働き続けるための新しいスタイルの会社も立ち上げた。自身の仕事への取り組み方も変化したという山田さんに、キャリアや仕事に対する思い、働く女性たちへのメッセージを伺った。

新しいサービスをつくる使命を感じ、その手段として起業

──企業に何社かお勤めになった後に起業をされていますが、働き始めた時からご自身の中で明確なキャリアプランをお持ちだったのでしょうか。

山田 キャリアプランがあったかというと、実はまったくありませんでした(笑)。理系の大学を卒業後、化粧品の開発の仕事がしたいと考え、最初は化粧品原料のメーカーに就職。入ってから、マーケティングやプランニングにも興味を抱き、化粧品メーカーに転職し、商品開発に携わりました。

──そこから、国内最大の美容総合サイト「@cosme」の立ち上げにいたるまではどのような経緯だったのでしょうか?

山田 1998年頃はちょうどインターネットが世の中に普及し始めた時期で、私もパソコンを買って、趣味の一環としてメールマガジンを始めたんです。良いと思った商品を自由に発信するような内容のものでした。すると、そこに読者の方からレスポンスをたくさんいただくようになって。化粧品メーカーで仕事をしていても、リアルな生活者の声を聞くのは難しいというジレンマを感じていたなかで、コンシューマーの声が日本全国から物理的な垣根を感じることなく瞬時に聞けることが面白く、鳥肌が立つような思いがしました。同時期にパソコン通信の掲示板を見ていて、オープンな場で個人の声をデータベースとして蓄積するガイドのような存在がないなとも感じていました。「みんなでつくる、みんなのためのコスメガイド」がつくれないかと考えるようになったのが、「@cosme」の原点です。

──そこから、起業に向けて動き出したわけですね。

山田 はい。それはすごく自然な流れで、そういうサービスをつくるのは自分の使命であると感じ、そのための手段としての起業でした。インターネットというプラットフォームができることで、生活者間の情報発信が当たり前になっていくことを肌身で感じ、やるなら今しかないという感覚で、1999年の春には立ち上げに向けて動き始めていました。化粧品は女性にとって身近で大事なものですが、必要不可欠ではないですよね。日用品であり、嗜好品であり、贅沢品でもあり、自分を表現するものでもあります。女性の気分もアップダウンさせる精神的にも近しいものですが、それを男性に説明するのはすごく難しくて(笑)。マーケティング的にはとても切り口の多い商材で、そういった点がライフワークとして関心が高いところでもありました。

<b>山田 メユミ(やまだ・めゆみ)さん</b><br><b>株式会社アイスタイル 取締役</b><br>1995年、東京理科大学基礎工学部生物工学科卒。化粧品メーカー在職中、個人の趣味で始めたメルマガへの反響をもとに、コスメ情報サイト『@cosme』を企画立案。サイト立ち上げに参画し、1999年(株)アイスタイルを共同創業。現在も同社取締役を務めるほか、2016年には未就業女性のスキルアップおよび就業支援を目的とした(株)ISパートナーズを立ち上げ、代表取締役に就任(現在は取締役)。また、経済産業省・産業構造審議会消費経済部会基本問題小委員会委員、総務省・情報通信審議会委員、内閣官房・知的財産戦略本部有識者本部員等も歴任
山田 メユミ(やまだ・めゆみ)さん
株式会社アイスタイル 取締役
1995年、東京理科大学基礎工学部生物工学科卒。化粧品メーカー在職中、個人の趣味で始めたメルマガへの反響をもとに、コスメ情報サイト『@cosme』を企画立案。サイト立ち上げに参画し、1999年(株)アイスタイルを共同創業。現在も同社取締役を務めるほか、2016年には未就業女性のスキルアップおよび就業支援を目的とした(株)ISパートナーズを立ち上げ、代表取締役に就任(現在は取締役)。また、経済産業省・産業構造審議会消費経済部会基本問題小委員会委員、総務省・情報通信審議会委員、内閣官房・知的財産戦略本部有識者本部員等も歴任

──「@cosme」は女性たちの生活の中に根付いた人気サイトに成長しました。立ち上げ時には、ご苦労もありましたか?

山田 ええ、もちろんありました。企業からの信頼を得る点にやはり苦労しました。企業から正式にいただいた情報をデータベース化し、そこに投稿を寄せていただく中立なサービスにしたいと思っていましたが、あらゆるブランドから情報提供いただけるまでには、立ち上げから10年ほどの月日がかかりました。匿名性のサービスなので、「悪口を書かれるかもしれない」「無料でも情報は出したくない」という企業もありました。悪いことを書く人もいるかもしれないけれど、それが正しくない情報であれば、「そうではない」という声が寄せられてサイトの中で自浄作用が生まれていくこと。化粧品は嗜好性の高い商材で、100人いたら100人の感想があってしかるべき。ポジティブな評価しかなかったら、見る側にとっては情報操作されているようにしか見えないこと。「自分にはこういう理由で合わなかった」という投稿は生活者のリアルな声であるということなどを、度々、ご説明に伺いました。同時に、我々は運営者として、ガイドラインに乗っ取っていない投稿がないか常に監視するなどの公正な運営を徹底。そうしたことを地道に続け、時間をかけて信頼関係をつくってきました。我々の努力だけではなく、生活者の購買行動において、インターネットで検索し、確認してから選択するのが当たり前になった時代の流れもあったと思います。