自信が持てるキャリアを増やして、不安をなくす

──女性がキャリアアップするうえで、管理職になるかならないかというのはひとつの転機になるかと思いますが、御社の現状はいかがですか。

山田 我々の会社は女性に活躍してもらわなければ未来がない会社だと思っています。実際にサービスの運営からエンジニアまで、女性が非常に活躍しています。本社の社員は6割が女性で、管理職比率はマネージャークラスだと4割くらい。昇進昇格において女性だから男性だからという差はまったくないと思っています。バイスプレジデント制をひいており、その中には重責を担っている女性も何人かいます。

──管理職になる女性は増えてきたものの、日本の企業には、まだまだ女性役員が少ない状況です。女性役員を増やすために、企業がすべきことは何だと思われますか。

山田 弊社も、経営層で見ると女性はまだ少なく、取締役では私だけです。多くの女性に経営に参画してほしいという思いを抱いていますが、まだまだロールモデルが少ないのが現実。見ていて思うのは、男性のほうが未経験でも手をあげてチャレンジしてみようという人が多いということ。女性は謙虚で、経験値や実力があっても、「自分にはまだできない」と躊躇する方が多く、もったいないと感じます。子会社まで含めると、経営陣の女性比率は少しずつ上がってきていますが、それも「やって下さい」という強い打診と共にチャレンジしてもらった形です。その結果、重責を十分担ってくれているので、そういった事例が積み重なることで、後任の女性も臆せず手をあげてくれるようになるのかなとは思っています。

──最後に、役員も視野に入れて働くために、女性たちへエールをお願いします。

山田 仕事をするうえで男女差はないとはいっても、出産する時にはどうしても女性は休まざるを得ませんし、そこに不安を感じる人が多いというのは、たくさん見てきました。でも、産休・育休はブランクではありません。私自身も育休をとることで、一生活者としての視点を改めて持つことができ、働くうえでの貴重なインプットになりました。皆さんにお伝えしたいのは、若いうちにチャンスがあれば、様々な経験を積んでもらいたいということ。キャリアにおいて自信を持てることがひとつでも増えれば、産休などのステージの変化があっても不安にならずにいられると思うからです。ライフステージが変化する前に、様々な経験に前のめりにチャレンジしてほしいと思います。「自分にはできない」と諦めてしまうのではなく、「こういうふうにできないか」と会社に対して投げかけてみることも大事。会社としても声を聞いて、初めて気づくこともありますし、自分が「こうありたい」と思うことを積極的に声に出すことで、実現していくのではないかと思います。


アクセンチュアの視点
 新しいサービスの立ち上げに使命感を持ち、仕事に熱中してこられた山田さん。出産・育児の経験から、意欲があっても時間の融通がある程度きかないと両立は難しいと実感され、ご自身以外の社員も両立できるように会社を変えてこられました。
 女性役員を増やすには、経験やスキル、マインドセットなど様々なポイントがありますが、そもそも働き続けられる女性を増やさないことには始まりません。山田様がなさったように、場所や時間といった制約をできる限り取り払い、働きたいという意欲を活かせるように、大胆に会社の在り方を考えることは大きな一歩となります。

取材・文/中澤小百合 写真/佐々木実佳