【大賞】

主婦から社長に! 現場の“働きがい”改革で赤字体質のサンリオピューロランドをV字回復

小巻亜矢さん(60歳) サンリオエンターテイメント代表取締役社長

 低迷する業績、成果の上がらないチーム――。それを立て直すために必要なのは、最新技術や外部から招く優秀な人材、多額の投資だろうか。サンリオエンターテイメント代表取締役社長の小巻亜矢さんが導いた答えは「NO」。社内のコミュニケーションを見直し、組織の変革を実施することで、今いる社員、今ある企業の資産で戦えることを証明して見せた。

 全社員と一対一で対話をし、モチベーションをアップさせアイデアを引き出すこと、世代や立場、部署が違う社員同士が対話する機会を設けること、社員からアルバイトスタッフへの積極的な声かけを徹底することなどの「人を育む組織変革」で、スタッフが積極的にアイデアを出して動く、強い組織を生み出した。

 審査員の早稲田大学ビジネススクール教授・入山章栄さんは、「組織のメンバーが最大限に力を発揮するための環境づくりに邁進する『サーバント・リーダーシップ』が、新しいリーダー像として注目を集めている。小巻さんの手法はその典型」と称賛する。

 政府が「クールジャパン」を国家戦略とし、消費の流れが「モノ」から「コト=体験」に移行していること、アニメやコスプレを好きでいることが、世の中で受け入れられるようになっていること、SNSの普及で“カワイイ”が低コストで拡散されることに着目し、「ピューロランドは時代に合っている」と分析。ターゲットを子供だけでなく大人にまで広げる、フードや施設で“インスタ映え”を意識する、ショーとイベントの完成度を上げ、特別な体験を演出するという戦略で、集客力をアップさせることに成功した。

 そんな小巻さん自身の人生は、想定外と苦難の連続だ。新卒で入社したサンリオを、25歳で退職し主婦になったが、34歳のときに次男を事故で失ったことで、人生が一転。「心にぽっかりと穴を抱えたまま」37歳で離婚し、その穴を埋めるように、主婦生活11年というブランクを経て、仕事復帰した。その後も、48歳で乳がんに罹患し左乳房を切除し、寛解。50歳で、病気が原因で子宮を全摘出したが、「今まで以上に女性に寄り添えるようになった」と、女性を支援する団体を次々に立ち上げた。「今は、命のある限り、やりたいことを全うしたいと思っています」と話す。


【準大賞】

難聴者である自身の視点を生かし番組制作、「知られざる世界」を見せ、数々の賞を獲得

長嶋 愛さん(39歳) NHK ディレクター

 東京都のろう学校を舞台にしたドキュメンタリー番組『静かで、にぎやかな世界~手話で生きる子どもたち~』(NHK)を制作。子供たちがキラキラとした表情で力強く生きる姿を映し出し、視聴者を圧倒。

 大きな反響を呼び、2018年度ギャラクシー賞テレビ部門大賞をはじめ数々の賞を受賞。自身も難聴者で、入社6年目に聴力をほぼ失ったが、ディレクターの仕事を続けるため、文字通訳のサポートを付けたいと会社へ訴え、「難聴者である自分」のままで、好きな仕事を続ける道を切り開く。