女性のキャリアとライフスタイルを支援する月刊誌『日経WOMAN』は、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」の大賞者をサンリオエンターテイメント代表取締役社長の小巻亜矢さんに決定しました。

「人を育む組織変革」で、強い組織を生み出した

 月刊誌『日経WOMAN』(1988年創刊)は、今年度に活躍した女性を表彰する「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」の大賞者をサンリオエンターテイメント代表取締役社長の小巻亜矢さん(60)に決定しました。小巻さんは、来場者数が低迷し、赤字が続いていたテーマパーク「サンリオピューロランド」に着任。2年で黒字化させるという「奇跡のV字回復」をけん引しました。

サンリオピューロランド館長に就任したのは55歳。37歳で離婚した後はなかなか仕事が見つからず「自分は社会で何の役にも立たない」と思っていたという
サンリオピューロランド館長に就任したのは55歳。37歳で離婚した後はなかなか仕事が見つからず「自分は社会で何の役にも立たない」と思っていたという

 低迷する業績、成果の上がらないチーム――。それを立て直すために必要なのは、最新技術や外部から招く優秀な人材、多額の投資でしょうか。小巻さんが導いた答えは「NO」。

 社内のコミュニケーションを見直し、組織の変革を実施することで、今いる社員、今ある企業の資産で戦えることを証明してみせました。全社員と一対一で対話をし、モチベーションをアップさせてアイデアを引き出すこと、世代や立場、部署が違う社員同士が対話する機会を設けること、社員からアルバイトスタッフへの積極的な声かけを徹底することなどの「人を育む組織変革」で、スタッフが積極的にアイデアを出して動く、強い組織を生み出したのです。

2歳の次男を失って――30代は、地獄のような毎日だった

 そんな小巻さん自身に人生は、想定外と苦難の連続でした。新卒で入社したサンリオを25歳で退職して主婦に。34歳のときに次男を事故で失ったことで、人生が一転。2019年1月に行った日経ARIAの取材では、当時を「息はしているけれど、生きていない状態だった」と振り返ります。

 「心にぽっかりと穴を抱えたまま」37歳で離婚し、その穴を埋めるように、主婦生活11年というブランクをへて、30代後半で化粧品販売の仕事をスタート。全国を駆け回り、女性の悩みを聞く機会が増える中で、「(女性たちの悩みに)一生懸命答える、でも、それは私にとっての答えでしかない。体の傷は目に見えるけれど、心の傷は何で癒やせばいいんだろう」と感じて学んだのがコーチングでした。