15年かけて不可能といわれたビタミンC高濃度配合に成功し、2019年3月発売以降、大ヒットを続けている「オバジC25セラムNEO」(ロート製薬)。開発を率いてきた同社スキンケア製品開発部部長の高橋京子さんが語る、リーダーとしての「改革と責任」とは?

ロート製薬 スキンケア製品開発部部長の高橋京子さん

「責任スイッチ」が入った瞬間

―― 前編に続き、後編では高橋さん自身にフォーカスします。高橋さんは1991年にロート製薬入社、分析業務を経て、43歳でマネジャーとしてスキンケア製品を研究開発する部署に異動、48歳で新設されたスキンケア製品開発部の部長に就任、2019年3月「オバジC25セラムNEO」発売と、順調にキャリアアップしています。

ロート製薬 スキンケア製品開発部 部長 高橋京子さん(以下、敬称略) 入社からずっと、研究部門で働いています。入社当初は徐放剤(薬物が徐々に放出するように工夫を施した薬剤)といった、内服薬を担当し、その後は製品の申請に必要な書類、医薬品の規格や設定試験を行う部署にいました。

―― 当時、女性が研究部門で働くことは珍しかったのでしょうか?

高橋 人数としては薬学部出身の女性のほうが多かったのですが、当時の女性社員は22歳で入社をして、2、3年で結婚して退職する人が多く、入社3年で同期が半分くらいに減ってしまいました。私自身も26歳で結婚しているのですが、その後も働き、子どもが生まれたのは42歳、管理職になってからです。入社28年、これほど長く働くことになるとは夢にも思っていませんでしたね。

 キャリア計画のようなものは、正直あまりよく考えていなくて。ただ、仕事に対する意識が変わった経験はありました。

―― ぜひ教えてください。

高橋 今まで実績のない有効成分が入った点眼剤を開発していたときのことです。当社は目薬に関しての実績が多くあるものの、当時はこの有効成分入りの点眼剤はありませんでした。光や熱にも弱く、安定性が良くない有効成分でしたので、シミュレーションを重ね、安定化させる方法を1つずつ細かく検証していました。

 当初はチームで開発を行いますが、うまくいかないと人数が減らされることもあります。その開発で、私は研究の担当者として1人残された存在になりました。医薬品には、審査当局からの承認が必要です。承認を取ったら、それが次につながるのではないかという思いから、最後までやり遂げたいと思いました。この経験で、仕事に対する「責任感のスイッチ」が入ったのです。

 しかしショックなことに、申請でき、承認も取れたのにもかかわらず、製品にはならなかったんです。研究開発をしてもごく一部は世の中に出ないことがあります。そこには市場の変化、コストなどのいろいろな状況が関わってきます。ただ、私の後を引き継いだ点眼剤のチームが違う形でもっといいものにしてくれて、ずっと後で発売されることになりました。そのときは本当にうれしかったですね。