お金を欲しがる理由は、他に幸せがないから?

 やりたいことが具体的にあれば、人間はそのやりたいことを追い求めているはず。つまり、「お金を求めている人は、他に何も幸せになれるものがないからだ」ということを言っているのです。

 人生というのはその日を生きることです。人間はその日を生きるようにしかできていないからこそ、過去のことを思えば後悔するし、将来のことを考えれば不安になる。

 しかし、これまでに無駄遣いしたお金やきちんと貯蓄してこなかったことを悔い、何歳まで生きるか分からない将来を気にして心配しても、きりがありません。それよりも、今のことを考えればいい。つまり「目の前にある具体的なもの」を追うことこそ、最も幸せに生きられる方法なのです。

本紹介
もっとショーペンハウアー!
『幸福について』(講談社まんが学術文庫)
ショーペンハウアー (原著)、Team バンミカス (著)、伊佐義勇 (著)

17歳で父親を亡くし、母親に捨てられるという不遇な青年期を過ごし、学者としても認められず63歳まで無名で過ごしながらも「幸福になれる」としたショーペンハウアー。彼の人生に結び付け、著作『幸福について』をまんが化して紹介。「人間が幸福になることは難しい。しかし、できる限り楽しく生きる術はある」など、生涯を通じて思索を続けた幸福についての名言がちりばめられている。

取材・文/中城邦子 イラスト/鈴木衣津子 写真/鈴木愛子