「富は海水に似ている」の真意とは?

 お金をためること自体が好きだという人もいるでしょう。しかし、それをいつどう使いたいのかという目的がないのだとしたら、ためてもためても満足することがない。むしろ、そのせいで人生が苦しくなっているかもしれません。

 ショーペンハウアーは、「富は海水に似ている。飲めば飲むほどのどが渇く」と『幸福論』に書いています。富を求めてもいい、しかし、求めるほど渇望感が増し、苦しくなるだけだよというのです。

「人間の欲望は際限がない」というのがショーペンハウアーの洞察。「富は海水に似ている。飲めば飲むほどのどが渇く」と『幸福論』に書いています (C)PIXTA

利他主義でも苦しみからは開放されない

 では、求めてしまう苦しみから逃れるためにはどうしたらいいのでしょうか。

 その方法としてショーペンハウアーは、芸術に触れることのよさを挙げています。特に高く評価したのが音楽です。音楽は人の心の奥底に語り掛け、繰り返し聞いても心地よい。芸術で心安らかになれれば、人生が豊かになります。しかし、芸術による苦悩からの解脱すら一時的なもの。ごまかしにすぎない、ともショーペンハウアーは言うのです。

 自分の欲望にとらわれて苦しむなら、利己主義の対極にある利他主義になって、人のことばかりを考えたらどうでしょうか。残念ながらそれも、他者に対してできる限りのことをするだけであって、一時的なもので欲望の苦しみから解放されることにはなりません。