プラトン、ニーチェ、ショーペンハウアーetc.名前を聞いただけで、頭痛が起きそうな大物哲学者たち。でも、哲学は今や働く女性の必須教養です。古今東西の哲学者が人生をかけて導き出した哲学を応用すれば、思考のショートカットになり、生きやすくなること間違いなし! では、ARIA世代の悩みを大物哲学者に相談するとどうなる? 山口大学教授の小川仁志さんが、歴史上の哲学者になりきってズバリ回答。「哲学的思考」も学べる連載第5回は、最強の女性哲学者ハンナ・アーレントが労働や仕事以外に大切な「活動」について問いかけます。

今回のお悩み
地元の子ども会の活動をしていますが、会議のたびにイラっとします。なかにはトンチンカンなことを言い出す人もいて。社会活動はしたいけれど、考え方ややり方が合わない人とムダな時間は過ごしたくありません。どう対処したらいいのでしょう。
ゲスト回答者プロフィール
ハンナ・アーレント(1906~1975)

ドイツのユダヤ人家庭に生まれ、ハイデガーとヤスパースに師事。1933年ナチスの迫害を逃れてフランスへ、さらに41年にアメリカへ亡命し、シカゴ大学やバークレーなどで教鞭を執った。主著に『全体主義の起原』『人間の条件』など。

 恐らく会社でバリバリと働いている相談者から見ると、地元の人の集まりはまどろっこしいと感じることがあるのでしょう。

 確かに会社の会議では、事前にレジュメを用意して配布しておくのがルールかもしれませんし、担当者に持ち時間が与えられて発表と討議を行うという決まりがあるかもしれません。職場や家庭では、「同じ利益を追求するため」、あるいは「共同生活を維持するため」に、共通のルールや似た考え方が生まれ、私たちはそれになじんでいたりします。

 しかし、1つの組織やグループのやり方だけにこだわっていたら、いろいろな考え方を持つことができません。社会全体が1つのやり方や考え方に凝り固まってしまったら、北朝鮮やかつてのナチスドイツのように非常に危険なことになってしまう可能性があります。

 そんなことにならないために、「仕事だけでなく、社会活動が重要だ」とアーレントは力説するのです。

アーレントが考える3つの営み
アーレントは著書『人間の条件』のなかで、人間の営みを労働(labor)、仕事(work)、活動(action)の3つの側面から捉えた。なかでも「活動」を重要視した。