頑張り過ぎない、柔軟な生き方を自然に学べ
老子の説くように一生を生きればいいということではありませんが、頑張っている人ほど無理をしてしまいがち。無理を重ね続けていると、気づかないうちに疲れやストレスが心身にダメージを与えていきます。
そして相談者のように自分と他人とを比べて、ないものを数えていると、自分を苦しめてしまうばかりです。悩んだとき、自分の生き方に疑問を感じたとき、一つの選択肢として老子の思想に従ってみることがあってもいいのではないでしょうか。
今の自分を受け入れ、自然のように融通むげに生きればいい。老子は毎日のサプリではなく、悩みや落ち込みを抱え過ぎて、心が風邪を引いているときの特効薬なのです。
『老子』(岩波文庫)
老子(著)、蜂屋邦夫(訳注)
古代中国の書。熾烈な戦国時代を生き抜く権謀術数を説いた統治理論であると同時に、自然科学的な視点で洞察された、人の生き方の知恵が詰まっている。自然の摂理から導かれた自足や謙虚さは、時代を超えた普遍性をもち、凝り固まった現代人の心に響く。
取材・文/中城邦子 イラスト/鈴木衣津子