「足るを知る」ことで満ち足りた人生になる

 流れにあらがわないでいたら、幸せな人生になるの? と疑問に感じる人もいるでしょう。これに対する老子の答えが、「足るを知る者は富む」なのです。

 「足るを知る」は、今あるもので我慢していたらそのうちいいことがあるというように聞こえてしまうのですが、そうではありません。「足るを知る者は富む」。今あるものに感謝しよう、あるものに満足することで豊かになれると言っているのです。

 今、相談者の手中にあるものをリストアップしてみるとどうでしょう。例えば、自由になる時間がたくさんある、その日に食べたいものが食べられる、友人たちと好きな時に旅に行ける……。自分が思っているよりも、持っているものがたくさんあるかもしれません。私たちは欲しいもの、ないものばかりをリストアップするから不満を感じたり、不全感に苦しんだりしますが、「あるもの」、「持っているもの」、「できること」をリストアップしてみると、意外と満たされていることに気づくはずです。

 流れにあらがわずに、今手に入れているもので楽しんでいれば、人生がうまくいくかもしれないというのが老子の思想ですから、何も無理をしなくていいのです。逆に今の生活を受け入れて楽しんだほうが、自分軸を持って生きている人だと、人を引きつけるかもしれません。

 老子は謎に包まれた人ですが、春秋戦国時代を生き抜き、最後には国を離れ、関所の役人に請われるままに書を書き残して姿を消したとされています。その場で名を成すことよりも「道」を行動原理として実践した。その生き方や言葉が新たな価値観を提示し、後世にこれだけ影響を与えているのです。

「あらがうことなくまずは受け入れよ、と老子は説いています」(小川さん)
「あらがうことなくまずは受け入れよ、と老子は説いています」(小川さん)