結婚という制度の下では、お互いにとってパートナーは自分の籠の中に閉じ込めた鳥のようなものになっているのです。共働きで子育てするためにはスケジュールはきっちり事前申告し合う必要があったでしょう。日ごろ頑張っている分、休みの日はお互いにパジャマで平気だったり、化粧っ気もなかったりすることもあるでしょう。しかし、そんなふうにすべて掌握している上に、身だしなみや立ち居振る舞いにも遠慮がなくなれば、もはやお互い一体化しているも同然。改めて、相手を追い求める必要がありません。

 そこにある愛はエロースではなく、家族愛としてのアガペー(無償の愛)に転化しているのです。では、夫婦の間に、追い求める心・エロースを取り戻す方法は――。

プラトン的解決法は、「自分が嫉妬する状況をつくる」

 夫婦の間に、追い求める心・エロースを取り戻すには、どうしたらいいか。完璧なものを追い求めざるを得ない状況を作ればいいとプラトンなら言うでしょう。しかし、人の心をコントロールすることは簡単ではありません。今、できることは、自分の中のエロース、相手を追い求めるみずみずしい気持ちを取り戻すことです。

夫婦の愛がエロースではなく、家族愛としてのアガペー(無償の愛)に変わってしまったということ?
夫婦の愛がエロースではなく、家族愛としてのアガペー(無償の愛)に変わってしまったということ?

 つまり、プラトンが言いたいことは、「自分が嫉妬する状況をつくればいい」ということです。夫を囲い込んでいる鳥籠に穴を開けて、ある程度距離を置くことです。今は籠の中に閉じ込めているから、追いかける必要がない状態。

 だとすれば、あえて自分が嫉妬したりひやひやしたりする環境をつくればいいのです。もしかしたら籠から飛び出して行ってしまうかもしれないという危うさが、追い求める気持ちを呼び起こします。

 十代の頃を思い出してみてください。

プラトンの哲学KeyWord:イデア
すべての物事には永遠不変の理想像―イデアがあるとした。例えばバラのつぼみを見て満開のバラを思い浮かべられるのは、頭の中にバラのイデアが存在するから。正義や愛にもイデアは存在する。エロースとは、イデア(を体現した人)を恋い焦がれる気持ちのこと。