哲学には「アガペー」「フィリア」「エロース」、3つの愛がある

 そもそも愛とは何か。これは哲学で最も古くから問われてきたテーマです。哲学の世界には3つの愛の概念があります。一つはキリストの無償の愛を意味する「アガペー」、もう一つはアリストテレスが名付けた同胞愛や友愛を意味する「フィリア」、そしてプラトンの主張する「エロース」です。

 プラトンは、物事の理想を掲げた人です。その理想こそが本質だとして、「イデア」と呼びました。私たちは皆その理想を求めて生きている。愛についても同じで、永遠の理想を求めようとする思いがエロースなのです

 プラトンの著書『饗宴』は、哲学者が酒を飲みながら愛について語り合うのですが、そのなかで、ある哲学者が面白い寓話を語ります。太古、人間は顔が2つ、手も足も4本ずつある姿だった。ところが傲慢で悪さばかりするので神が怒って体を真っ二つに引き裂いてしまった。顔が1つ、手足が2本ずつの身体に別れ別れになった二人の人間は、また元の1つの身体に戻りたくて求め合う。それが愛し合う二人の始まりだというのです。

 ところがプラトンはこの内容を否定しているのです。不完全なものを私たちは一生懸命求めるだろうか。そうではない、完璧なものを求めるはずだ。だが、完璧なものなどこの世にはないから永遠に追いかけることになるのだ、これが愛の本質だと言ったのです。

 理想を体現した姿に恋焦がれるその気持ちは、純愛と言っていいでしょう。ここから純愛のことを、プラトン的愛、プラトニック・ラブと呼ぶようになりました

プラトンに成り代わり、悩み解決のヒントは「十代の頃を思い出す」ことだと力説する小川さん
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プラトンが、夫婦間に愛(エロース)が維持できない理由をズバリ!

 相談者のように、いつの間にか話すこともない淡々とした夫婦関係になってしまうのは、相手を追い求めようとするエロースがパワーダウンしたためと言えるでしょう。