その後、子育てが一段落すると、本格的に再就職を検討。希望はWEBのスキルを生かせるパートタイムの仕事。「長く専業主婦だった自分がいきなりフルタイムで働くのは難しいと思ったためです」

 このとき、神谷さんは48歳。当時は、求人に年齢制限をもうけている企業が多くあり、条件が当てはまるIT系の求人は1つもなかった。「でも、熱意が伝われば年齢の壁は越えられると信じていたので、例えば『20代まで』と書かれた求人にも、自分のスキルを詳しくつづった履歴書を添え、迷わず応募していました」

再就職したIT系スタートアップで、新規部署に立候補

 数えきれないほどの不採用が続いた後、創業間もない大阪のIT系スタートアップに採用された。「同社の求人広告にも年齢制限はあったものの、勤務時間は『応相談』。これは挑戦するしかない、と迷わず履歴書を送って面接にこぎ着け、御社で働きたいという意欲をアピールしました。面接の様子は全社員が共有されていて『この人とならチームとしてやっていける』と判断され、採用されたと後に聞きました」

「熱意が伝われば年齢の壁は越えられると信じていた」という神谷さん。求人で「20代が活躍する会社」とうたう職場環境を熱意で突破し、48歳での再就職を決めた
「熱意が伝われば年齢の壁は越えられると信じていた」という神谷さん。求人で「20代が活躍する会社」とうたう職場環境を熱意で突破し、48歳での再就職を決めた

 仕事は午前10時~午後3時勤務のカスタマーサポート。WEBのスキルと粘り強さを武器に目の前の仕事にまい進する一方、より手応えある仕事をしたいと思い始めた神谷さんの元に、再び蜘蛛の糸が下りてきた。以前から興味があったWEBマーケティングの部門が新設されることになったのだ。「さっそく立候補すると『どうぞやってください』と。ただフルタイムで働く自信がまだ持てなかった。上司に相談したところ、社長にも話を通してくれ、月14日出社すれば残りは在宅勤務でOKと認めてくれたんです。社員の働きやすさを最優先する、スタートアップ企業ならではのフレキシブルさに助けられました」

 ふつうの主婦よりはITについて詳しいと思っていたが、「ITリテラシーは社内で一番低かった」。社員の大半は20代の男性という環境になじむのは大変だったのでは? という問いには「いいえ全く。若いIT男子たちは親切で、『すみません! これが分からないんです』と質問しても嫌な顔をせず対応してくれました。世代は違っていても一緒にいて楽しく、勉強になることが多かったと思います」