専業主婦になったものの「このままでいいの?」

 好きな仕事でないと続かない、でも好きだけでも続かない。改めて自分のキャリアを見つめ直すことになった。一生続けられて、体に負担のない仕事──それを可能にするには「キャリアチェンジするしかない」と悟り、大原学園の税理士講座に通い始めた。

 「大学時代に経営学を学んでいたので、一生の仕事につながる資格を取るなら税理士だと思ってチャレンジしたのですが……、周囲からは『いきなり税理士講座とは無謀だね』と言われました(笑)。でも当時は、それほど一生働ける『手に職』がほしかったんです

 ただ、やはり税理士資格は難しく、半年ほどで中断。その後、設計事務所に正社員として採用され、経理・総務・人事として働いたが、すぐに長女を妊娠。再転職から半年ほどと社歴が浅かったため産休・育休を取ることが難しく、そのまま退職し、32歳で出産。以降5年間は専業主婦として生活した。

 「今思うと、20~30代は働きたくても、働く場所がない。働きたいのに、体がままならない。でも氷河期世代だから『仕事がなくなったら、どうしよう』という不安は人一倍あり、すごく苦しかった。専業主婦になりましたが、『まずは体を休めよう』という思いと『一生このまま働かなくていいの?』という思いの板挟みになっていました」

「働くと激務、働かないとブランク。そんな仕事へのイメージの狭間で苦しんでいました」
「働くと激務、働かないとブランク。そんな仕事へのイメージの狭間で苦しんでいました」

子育て真っ最中でも、在宅の仕事を深夜に続けた理由

 35歳で第2子を出産し、子育てに専念しながらも、時折、「このままでいいの?」という疑問が頭をかすめる。そんなとき、近所の税理士事務所が在宅業務を請け負う人を探していることを知った。税務処理に使う伝票を整理し、データを入力。週に1度、15分ほど出社してデータの受け渡しを行う。子育てで思うように外出できない堀さんにとっては願ってもない仕事だった。

 「ところが、いざ始めてみたら家に幼児がいる状態で、正確さを求められるデータ入力の仕事はできなくて。結局、子どもたちを寝かし付けた後、夜中に仕事をしていました」