夫の会社が倒産した直後、46歳のときに起業した、村上裕子さん(56歳)。専業主婦時代から学び続けてきた「着物」をビジネスにすべく会社「万(よろず)インターナショナル」を立ち上げた。家に帰る余裕もない仕事漬けの日々を経て、今、「休むのがもったいないくらい、仕事が楽しい」と語る。ビジネスについては右も左も分からない専業主婦だった村上さんだが、今は「子育てで身に付けたことが、すべて仕事に役立っている」と振り返る。

(上)夫の会社が倒産、背中を押されて始めた着物事業
(下)着付師としての「手」は一生かけて進化していく ←今回はココ

 結婚して22年目、2011年に夫の会社が倒産し、財産を失い、目の前は真っ暗……。そんな状態で、それまで村上さんが「無理」と避け続けてきた起業を、突然「する」と一念発起したのはなぜだったのか。

無意識のうちに自分にブロックをかけていた

 「私、本当に仕事はしたくなかったんです。なぜ、あんなにかたくなに拒んでいたのか。たぶん、無意識のうちに自分でブロックをかけていたのでしょうね。自分の可能性って案外、本人には見えていないものなのかも。お金の苦労もしたことがない、事業の勉強もしたことがない私が、知らない世界でやっていけるのか。そもそも、自信がありませんでした」

 村上さんは、今までの生活を壊したくない気持ちが強かった。倒産という非常事態がなかったら、「今の仕事は絶対にしていなかったでしょう」と断言する。夫からの強い勧めで背中を押され、まさに清水の舞台から飛び降りる思いだったのだろう。

「夫の会社の倒産という非常事態がなかったら、起業はしていませんでした」
「夫の会社の倒産という非常事態がなかったら、起業はしていませんでした」