着付けをした女性が「私が一番だったよ!」と報告

 バッグの販売が軌道に乗り始めた頃、人に頼まれて着付けを始めるようになった。すると徐々に口コミで利用者が広がったため、手ごろな価格で着付けをしたり、着物のレンタルをしたりする事業も始めた。そのうちに「着付けを学びたい」という人が増え、短期で習得できるビギナー向けの着付け教室も開始した。今では、年間1000人以上もの女性に着物のレンタルや着付けをする。

 「着付けをしたお客さんがパーティーに出かけていくと、23時頃にみんな大はしゃぎでアトリエに帰ってくるのです。そして、『今日、他にも着物の人はいたけど、私が一番だったよ!』って満面の笑みで報告してくれて。そんな一言がうれしくて、1日も休まず営業してきました

年間1000人以上もの女性に着物のレンタルや着付けをする。「1日も休まずに営業してきました」
年間1000人以上もの女性に着物のレンタルや着付けをする。「1日も休まずに営業してきました」

 村上さんが着付師として大切にするのは、昔ながらの「手結び」という技法だ。腰ひもが何本かあれば、着付けはできる。手の技術を磨くため、便利な道具には頼らない。「相手をどんな女性に見せるかは、着付師の手加減次第です。手は進化します。50歳、60歳からでも進化すると思っています」。毎朝の日課は、粗塩を使う指の間のマッサージ。手が温まり、指先が動きやすくなるという。