ハードルを低くして試し続ける

 そんな矢先、街中で偶然、以前ベトナムの国際協力銀行で一緒に仕事をしていた人に出会った。「その人がJICAで働いていたんです。『今、何しているの?』と聞かれて近況を話したら、『ちょうど今、募集しているからJICAで働いてみない?』と声をかけてもらって……」

 職務内容は、未経験ながらも前職のキャリアが生かせそうだった。ちょうど下の娘も幼稚園に入り、時短勤務ならできると聞いたばかりだ。「かなり悩みましたが、家族に相談して、思い切って応募してみることにしたんです」

 結婚前はバリバリ仕事をしていても、家族や家庭の事情で仕事を辞めざるを得ない人もいる。ましてや海外駐在や留学に帯同する妻は、ビザの関係で仕事をして稼ぐことができないことも多い。「子どもが小さくて長時間預ける場所がない」「ビザの関係でそもそも就労できない」という状況では、「働くのは無理だ」と諦める人も多いだろう。

 それでも入山さんは、海外帯同中は無償のボランティアから、午前中のみの短時間から、週2回のパートから……とハードルを低くして「できる範囲で今やれること」を試し続けてきた。「専業主婦からフルタイムで働くのは、自分だけでなく、家族の変化も大きい。とにかく無理のない範囲で少しの変化で乗り切れるよう、一つ一つの歩幅を小さく始めました」

 20代のころからやりたかった開発援助の仕事を、専業主婦生活を経て40歳で始めた入山さん。今、忙しくも充実した日々を送るが、一方で葛藤も抱えている。後編ではそのリアルな思いに迫る。

取材・文/井上佐保子 写真/鈴木愛子