「デニール? こんなタイトルを目にして、『ああ』とニヤリ笑ってその意味するところが分かるとすれば、そんなあなたは女性であれ男性であれ、わりとスケベである」と河崎環さん。20デニールを選ぶ女と、80デニールを選ぶ女。その心理を読み解きます。

ヨーロッパの下着店やストッキング店が本気を出す季節

 ヨーロッパに住んでいた頃、歴史を感じさせる石造りの教会の並びだったり薬局とスタバの間だったり、ファストファッションの店舗やスーパーの隣だったり、石畳の街中にごくごく普通に出現するのが、ちょっと照れちゃうくらいゴージャスでセクシーな下着専門店や、ストッキングの専門店だった。

 1年の中でもまさに今ごろ、街がクリスマスや新年を迎えるべくヨーロッパらしいクラシックで絢爛(けんらん)な装いを始めると、下着屋とストッキング屋が俄然(がぜん)本気を出す。つつましい日本人の私が「なんか、目を合わせちゃいけないんじゃないか」と思うほど、ショーウインドーのマネキンたちがスッケスケでピラッピラで、包むとか隠すとかという役割をすっかり放棄した下着や網タイツで着飾り、うっふんあっはんと一斉にもだえ始める(ように見える)のだ。

 赤や黒や金、レースやリボンや紐(ひも)、網タイツの模様もさまざまで、アニマル柄やファー、革素材のものも多く、よりによって肝心のところがただのチュールなんてデザイン(レースカーテンだけでできた下着を想像していただきたい)もフツーにショーウインドーに飾ってあった。えっそれっていわゆるオトナのおもch……いや違う、れっきとした超一流ブランド、お高いお店なのである。肝心のところが全く隠れていない下着(それは下着なのか)が1枚2万円、はく部分に一切の縫い目がなくて「はいてないんじゃないか」とドッキリするようなストッキングが1枚5000円するのである。

年末年始はヨーロッパの下着店やストッキング専門店が本気を出す季節
年末年始はヨーロッパの下着店やストッキング専門店が本気を出す季節