ARIA世代の身だしなみは治安維持の問題?

 おそらくARIA読者が共通して、できることなら避けたいと思うのは「所帯じみている」、これじゃないだろうか。所帯じみるも何も、じっさい所帯持ちで、中学生の食べ盛り息子といまや社会人の娘すらいるアラフィフの私でさえ、なるべく生活に疲れたおばさん感だけは醸すまいと心がけている。断固たる事実として中身は生活に疲れたおばさんなんだけど、せめて外側はそれをカモフラージュしようというよこしまな方向性の動機が、私を「装わせている」と思うのだ。

 せめて機嫌よく優しげに顔色をよく見せる、淡い色のヒラヒラした服を買うようになった。「実年齢マイナス5歳」だか何だかの売り文句にそれほど期待も信用もしていないふりをして、エイジング世代用のコスメやスキンケアやヘアトリートメントやらを買っては朝晩せっせと塗りこんでいる。美容家電やサプリのお世話になり、スポーツジムに美容院にネイルに美容皮膚科にと、さまざまなサービスへお金を落とす。今もこれを書きながらミニサイズの美顔ローラーをゴリゴリして眉間の縦ジワを伸ばしている。

 この前、ジムに行く前にせっせとメイクしていたら、「これから滝汗をかきに行くのに、何でわざわざメイクしてるの」と家族に聞かれた。

 「滝汗をかくからよ」。私はビューラーで上げたまつ毛の隙間を埋めるようにアイラインを引きながら答える。

 「おばちゃんが滝汗かいたらね、眉はないわまつ毛もまばらだわ、顔色は悪いわシミシワだらけだわ、そこに髪の毛がベッタリ張り付いてゼエゼエ言って、もうそれはそれはホラーな絵になるのよ。だからその衝撃を少しでも和らげるために、たとえ汗で9割流れようとも化粧の一つや二つきっちりしとかなきゃ、周りを怖がらせるのよ。世間の平和が脅かされるのよ!」

 40女の化粧や身だしなみは、「美意識の問題」とかそういう意識高い話以上に、治安とか平和維持の問題である。

 ジムのスタジオプログラムに通って、若い女子会員たちと半裸で自転車を漕いでいると痛感する。20代の彼女たちが引き締まったボディを躍動させ、きめ細かな肌に玉の汗を浮かべている一方で、40代後半の私はもう1年半漕いでいるのにムッチリ脂肪感を失わない、ドッシリ重たい体で自転車をギシギシ振り回し、肌は汗を弾いたりせずに、何だろう、とにかくベッチャリとずぶ濡れである。頑張ったあとはちょっとくらいツーンと酸っぱい匂いすらして、切なくなる。おじさんの加齢臭がどうのとひどいことを言っていた私も、今や完全に同じ箱の中だ。

 加齢は万人へ平等にやってくるのだ。

20代の彼女たちと40代の私たちでは、汗の質も違うのでしょうか…
20代の彼女たちと40代の私たちでは、汗の質も違うのでしょうか…