あなたは荷物が多い女? それとも、少ない女?――街を歩いていると、いますよね。小さなバッグ1つで身軽に歩く、ちょっと近寄り難そうな、いい女が…。河崎環さんが着眼した「女のバッグと人生」論。ぜひご自身のバッグを思い浮かべながら、読んでください。

そういえば女子高生のときから荷物が重かった

 その人は「あいかわらず荷物が多くてさぁ」と苦笑いしながら、実際ずしりと重そうなバッグを2つ、片方はエンヤコラと肩にかけ、片方はもう一方の手に提げながらやってきた。

 「あいかわらず」とは、私たちが中高生の頃通っていた女子進学校が「ガリ勉」で知られ、生徒の荷物がいつも辞書や教科書や参考書でいっぱいになっていたことを示しているのだ。沿線のおしゃれでモテる他校の女子に比べて明らかに大きく重くカッコ悪くパンパンに膨らんだ学生かばんとサブバッグを抱え、汗をかきかき学校前の「心臓破りの坂」を登って「足が太くなる」と笑い合い、通学途中には立ちながら参考書を読みふけり、座れば膝の上でノートを開いて数学の演習問題を解き、時に小説や漫画を開き、周りなど見えずどこかの男子学生の視線など一向に気にせず、一心不乱に勉強したり読書したりしていた愛しい女子中高生時代を、私たちはまだ覚えている。

 四半世紀以上たってもその習慣は私たちの中にしっかりと刻み込まれている。あいかわらず小さなバッグでなど暮らせず、その日1日に必要な仕事道具(当然ノートパソコンや機材を含む)やジム通いの用意やペットボトルや、入っている金額に比べて無駄にゴツい財布や、それぞれ読みかけの何冊もの本や、いざという時の備えだがほとんど出動したことのない充実した救急キットも入りパンパンに膨らんだメイクポーチや、帰りがけに必要な買い物エコ袋や、そのすべてをバッグの中に詰め込んで運び、東京じゅうを歩き回る。

 そんな私たちの「小じゃれて身軽なモテ女になどどうにもなれない、重たい生き様」がそのまま重たいバッグに表れているのだった。

大きなバッグをしっかり抱えて、今日も私たちは出掛けます
大きなバッグをしっかり抱えて、今日も私たちは出掛けます