オタク女子界隈(かいわい)なんかでは、対象を呼び捨てするファンはそりゃもう、それまで投下してきた時間も体力も金額も愛情の濃さも(あと本人のキャラの濃さも)ガチレベルのファンだし、自分の応援によって相手を育てている(自分が養分になっている)という意識がある。友達目線や姉目線や母目線ということもままあるが、多くの場合において脳内ポジションは「彼女」だ。「私の」太郎、なのである。

 だからなのだ、リアル世間で女性上司が男性部下を「山田ぁ!」どころか、よりによって「太郎ぉ!」なんて呼んでたら、もう肉体関係を示唆しているとしか思えない。その場にいる全員の耳と神経が一斉にその方向へ向けられるだろう。だが割と多くの職場において、「山田ぁ」を連発する50代以上のガチガチ管理職女性の姿が目撃されている……。「太郎ぉ」でなくてよかった、と、その管理職女性の身をおもんぱかって胸をなでおろす私である。

管理職ARIAは、そこのところ、フェアでいきたいですよね
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 おそらくその女性管理職にとっては、これまで長年戦ってきたがゆえに、その男女差のないスタイルが武器であり武装であり、「フランクでニュートラルな自分」像なのだろうと、私もよく理解できる。きっとこれまでのキャリアで、さんざんそのひと自身も男性上司に「敬称略」され、同じチームでの連帯感や所属意識を高めてきたのだ。

 ただ、コンプラ時代の職場で、男性上司が部下を「山田ぁ!」と呼びつけることさえパワハラと言われかねない男性の戦々恐々ぶりを見るに、翻って女性側も「山田ぁ!」ましてや「太郎ぉ!」をいつまで続けられるのかな、とふと考える。

 男女に限らず、人間関係は鏡合わせ。相手にマナーを求めるなら、自分の側にもマナーが求められるのだ。

文/河崎 環 イメージ写真/鈴木愛子