1カ月以上の外出自粛生活を続けていく中で、初めは不自由だと感じていたことも、慣れてくると快適になってきた気がします。いや、むしろ以前の生活には戻れないかも。そして思います。これまで誰のためにメイクしていたんだろう、と。河崎環さんのコラム、今回のテーマは「自分のためのマニアック消費」です。

 Zoom会議にオンラインショッピングにUberEatsで出前、本は電子書籍、YouTubeの筋トレ動画でフィットネス、眼福の補給は配信映画やドラマをマラソン視聴……。オンライン漬けデジタル漬けでそれなりに暮らしが回ってしまい、次第に「もうこれで生きていけちゃうのでは……」と、Withコロナを言い訳とした怠惰にすっかり飼いならされかける今日このごろのワタクシです。皆さまにおかれましてはいかがお過ごしでしょうか。

人目を気にする日本社会で、すべてのことの「意味」が変わった

 世間が徐々に自粛解除に向けて歩みを進める中、恐る恐るドアを開けて外出し、長らく避けていた通勤を始めるというARIAさんもいらっしゃるはず。あるいは緊急事態宣言の中、毎日緊張感と隣り合わせで、見たことがないほどがらんどうの街で仕事をこなしてきた人も少なくないはずだ。

 あの、外に出てもまばらにしか人の影を見ない、ときどき車の走り抜ける音だけが鈍く空に響く街の風景。車内の隅と隅にだけポツリと人が座って、換気のために開けられた窓から風とごう音が通り抜けていく電車。これまで毎日見ていたものと同じとは思えないような、雑踏も広告もイライラもない駅の中。

 人と人との接触を断たせるウイルスの出現で、人間同士が集まることがことごとくなくなった。外出の意味が変わった。働き方も(改革を進めていたあの必死さはなんだったのかと思うほどあっけなく)激変した。いろいろなことの姿も意味も、一瞬で変わってしまった。

人気の消えてしまった街。もう以前と同じ生活には戻れないかもしれない
人気の消えてしまった街。もう以前と同じ生活には戻れないかもしれない