緊急事態宣言から2週間。外出自粛や在宅勤務の不自由な生活にも、少しずつ順応し始めている頃ではないでしょうか。学校の授業や職場の会議はもちろん、友人との飲み会もオンライン。これが結構楽しいんです。河崎環さんのコラム、今回のテーマは「巣ごもり時代の新たな劇薬――Zoom飲み」です。
「今日のテーマ:カレー」。
とある平日の夜8時。私たちはそれぞれの自宅で、いくつもの四角形に分割されたパソコン画面に向かい、思い思いのカレーとお酒で酒盛りをしていた。
「あっ、Aさん、久しぶりー。見てこのカレー(ドボッ)、ああああっ!」
「ダメだよBちゃん、パソコンの画面に向かってカレーを傾けちゃ……」
「名店のカレー、テークアウトしたのに!」
「ちゃんと拭くのよ」「キーボード大丈夫?」「デスクの上だから大丈夫(しくしく)」
「いやー、もう推しに会えなすぎて植物みたいになってきたわ」「私も」「私も」「私ゃ枯れた」
「このまま閉経す……」
「おっとその話はそこまでだ、ウチ小学生の娘が隣に座ってる(小声)」
「まだ宵の口ですからね、ゴールデンタイムはファミリーモードで」
「サーセン」
「植物通り越すと鉱物になるって誰か言ってたよ」
「そうか、石か。我々はいずれ無機物になっていくのか」
「もう石でいいよ、石で」
「だな」「だね」「石だ」「ストーン」
「(ピンポーン)あっ、ウチUberEats来た」
「……あのさ、やっぱり女8人でZoom飲みやると、みんな会話がテキトーだよね」(爆笑)
この時代だからこそ大流行
緊急事態宣言、とうとう発令。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、全国で不要不急の外出を8割低減することを目指している。そんなわけで3月以降、ARIA読者の皆さんも職種はさまざまながら、リモートワーク(在宅勤務)へと順次シフトし、制限下の暮らしにも少しずつ感覚的に慣れてきたのではないだろうか。その中で現在も出勤して私たちの生活環境を維持・保守してくださるインフラ業の皆さん、私たちに必要な物資を十分に提供してくださる物流・小売業の皆さん、そしてコロナウイルスと最前線で闘い、私たちを守ってくださる医療界の皆さん、本当にありがとうございます。
この「おうち生活」すなわち蟄居(ちっきょ)暮らし、コロナ感染対策にあたる専門家が真剣に繰り返す通り、まさに私たちの「行動」に「変容」を与えている。基本的に外出しないのが前提の暮らしでは、仕事はビデオ会議やグループチャット中心、食事は自炊やテークアウト。映画やジムやコンサートなどの余暇活動は「3密」回避のために休業や中止・延期で、代替としての自宅活動ということになる。
劇的な生活の変化で人々の消費行動は大幅に塗り替えられ、「巣ごもり消費」などという名称が与えられて、そこに新たな流行が生まれた。それが遠隔で複数の人と対面して話をするビデオ会議ソフト(代表例がZoom)であり、プライベートでも友人同士がZoom画面の前で各自飲み食いしながらオンラインの会話を楽しむ「Zoom飲み」である。