世間では仕事のデキる女として一目置かれる、シャープなARIA世代の女性たちが、続々と年下の男性にハマっている。コラムニスト河崎環さんは、さまざまな実例を取材して気付いた。なぜ、彼女たちがハマっていくのか、その共通点に。

 

「10年ぶりに再会したくらいの勢いで喜んでくれるのよ!」

 「最近さ、ワンちゃんをね、飼い始めちゃったのよ」

 クールなはずのその女(ひと)がちょっと照れたように言い、「黒のトイプードルなんだけど」と言い添えたので、私は「ええええええ」と、のけぞった。

 「だってついこの間まで、この口の悪い私と一緒に『あの世間の歩道をちょこまか歩く、犬だか猫だか分かんないイキモノは何だ、あんなすぐ歩き疲れて飼い主に抱っこされるような超小型犬は犬じゃない、いっそ猫を飼え!』って話してたじゃないですか!」

 「でもねぇ、もう犬でもいないと会話しないのよ、家族と。それに何より、毎朝まるで10年ぶりに会ったかのような熱烈歓迎ぶりでね、『ママに会えてうれしーっ!』って全力で私のベッドに飛び込んできて、ガフガフ言いながらベロベロ顔をなめられるのよ。こんなに私に喜んでくれるなんて、なんてかわいいんだろうって、もう溺愛よ

 「猫じゃないんですね」

 「犬よ、犬なのよ! やっぱりツーンとクールな猫じゃラブラブにはなれないの。飼い主を慕って慕って、潤んだ目で見上げてくれるワンちゃんの愛のおかげで、もうすっかり潤っちゃってアタシ(笑)」

 「……『男の子』ですか、『女の子』ですか」

「こんなに私に喜んでくれるなんて、なんてかわいいんだろうって、もう溺愛よ」
「こんなに私に喜んでくれるなんて、なんてかわいいんだろうって、もう溺愛よ」