東京五輪・パラリンピック組織委員会会長であった森喜朗氏の女性蔑視発言が、世界中からバッシングされるのは、それがオリンピズムと逆行しているからだけでなく、今の世界に共通する新しいルールを理解していないことへの警鐘ではないでしょうか。ルールが変わったことにも気づかない古い体質について、コラムニストの河崎環さんが鋭く切り込みます。

21世紀のゲームルールの変化に気づかないのは誰だ?

 絶対、わざとだ。

 日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で、森喜朗・前東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会会長の「女性蔑視」発言が報道されたとき、私はそう思って笑った。

 わざとこんなトンデモ問題発言をして、五輪開催への疑問と批判山盛りの世論の中、大会組織委員会会長ポストを降りようとしている。あるいはもう少し長期的なたくらみで、これを皮切りに大会組織委員会の存在自体を解体あるいは事実上機能停止させ、2021年東京オリンピックを「国内・国外ともに平穏無事かつ十分な調整に至らず、大変遺憾だがいたし方なく開催中止」へ持ち込もうとしている、きっと。

 だって、そうでもなけりゃ、「文科省が女性、女性とうるさく言うから仕方なく理事会に何人か招いたけれど、女性は競争心が強くて話が長いから会議に時間がかかる」的な妄言、この時代にどこのまともな中央の公人がそんな発言をするだろうか。「私のクビを今すぐスパーンと気持ちよく飛ばして下さい」と言わんがばかりじゃないか。

 だが、どうやら本気だったらしいと知って、これ以上ないほどあきれた。

 「切り取り方が……」なんて不思議な擁護論もあったけれど、あの発言全文を読んで切り取り方で問題発言のニュアンスが変わると思っている人は、ちょっと申し訳ないが国語の読解力が低いのだと思う。

 さらに、「森会長は勇気がある。ヒステリックに頑張りすぎる女について、男たちが思っていることを見事に代弁してくれただけだ」と無邪気に喝采する、何が問題なのか全く理解できていない人々は、それが男性であれ女性であれ、21世紀になって世界のゲームルールが洗練され変わったこと、そして自分が半分以上滅びかけていることに気づいていない。

 全体的に、いくらなんでも前時代的すぎやしないか。我々は2021年の先進国に生きているというのに。