オトナの劇薬とはつまり、こういうこと

 要は、最近はやりの暗闇フィットネスジムで自分を追い込み、美男美女のインストラクターさんに指導されながらストレスと汗を発散しているのである。「原稿や人生に行き詰まったら暗闇で汗を流せ」が最近の私のモットーで、ついついウェアやグッズ購入、特別レッスンのための課金などジム関連費用がかさんでいくのだが、なぜだろう、喜んで財布を開いている感さえある。

 なるほど、どうやら経済的にも精神的にもいろいろ余裕のあるオトナたちだからこそ「ちゃんと引き返せる程度に」ちょいとなめてたしなむことのできる、オトナの劇薬というものがあるようだ。

オトナのドーピングのポイントは「ちゃんと引き返せる程度」であること
オトナのドーピングのポイントは「ちゃんと引き返せる程度」であること

 熟女という言い方はともかくとして、「成熟した私」「その分ちょっとは賢く、生き易くなった私」「見晴らしがよくなった私」という実感は、ARIA読者の皆さんならお持ちのことと思う。思えば新卒以来20年や30年、私たちは本当に、けなげなくらい真面目に真摯に、自分の人生と格闘してきた

 この格好をするのが正解なのだろう、そう信じて、好きでもない服を着た。こう振る舞うのが正解なのだろう、そう信じて、無理やり笑顔を作った。人の視線が「おっ」と止まるむやみに高価なバッグや時計をボーナスで買って「自分を託した」。バッグでも異性でも、その時はきっとこれで人生が変わり、きっとこれで幸せになれるような気がして大好きで、一緒じゃなきゃ自分じゃない、これこそ絶対一生もの、なんて熱を上げていたけれど、今振り返るとそれほどでもなかったバッグが死屍累々だ。毎シーズン、有名な化粧品会社の新色が出るたび、「私」に似合う色をずっと探していた、いや、今も決して諦めてはいませんけど? という女性も多いのでは。